セピア
















部活終わりの部室に二人。
願わくば、目の前に居るのはこの人ではなければいいのに。

リョーマがそう思っても、目の前にいるのは淡い栗毛の不二が一人。

(部長、早くバアさんとこから帰ってこないかな)

そう思っても竜崎の元へ行った手塚が解放されるのはまだ暫くの猶予がある。

(その間、この先輩とここで二人で居なくちゃなんないのかな…。早く帰れ)

祈る、というよりはなにかのまじないでもかけるかのようにリョーマは不二を睨んでみるが、不二は意に介する事等無いようににっこりと笑った。

「越前、どうしてセピア色の写真があるか知ってる?」
「何なんすか、いきなり」

脈絡もなく切り出して来た不二の本意など付き合いの浅いリョーマになど判る訳も無く。

「セピアになるのは時間が経ったからじゃないんすか」

特別ではない人以外すべての周りの人間に見せるどこかぶすりとしたようなリョーマもいつもの表情。

「それもあるんだけどね、要は写真のプリントの際に最後の行程が上手くいってないからなんだよ。時間が経ってセピアになるのはその最後の行程の効果がなくなってくるからなんだ」

饒舌に語る不二を見て、ああ、そういえばこの人は写真が趣味だっけ、とリョーマは思い出した。
だからと言って、写真を趣味ともしていない自分にいきなり写真の話を振られても仕様がないと思うのだけれど。
これが手塚が語る趣味の話ならば、もっと彼を知りたいと思うリョーマにとっては極上の小咄になる。

「越前もね、恋愛に於いて行程を誤るとすぐに相手の思いは褪せちゃうかもよ」
「…ケンカ売ってるんすか」

先程よりも険を含んだ視線で見上げてみるが相変わらずの笑顔で難無く躱されてしまう。

「先輩としての忠告だよ」
「無用っすよ」
「それでもって、手塚を大切に思う一人の男としてのお願いでもあるかな」

越前。
リョーマの名を呼ぶ不二は先程までの笑顔はどこへやら、うっすらとではあるがいつもは細められている目の奥に在るその眸が覗いていた。

「手塚を大事にしてやって」

覗いていた不二の眸はすぐにまた隠されていつもの微笑み。

「…らしくないっすね。不二先輩?」
「んー。なんか、手塚の事を好きなのが何かを超越しちゃったみたいでね。手塚が幸せならいいなって最近思う様になっただけだよ。
  ある種、君の想いも越えた感じだよ」

こちらへ近付いて来る駆け足の跫が不意に聞こえた。
それに気が付いて不二はゆっくりと立ち上がった。

「英二、ようやく用事済んだみたいだね。じゃ、越前、僕はこれで帰るから」
「不二先輩」

扉へと足を向けかけた不二をリョーマが呼ぶ。
それに何を訊ねるともなしに不二はリョーマを振り返った。
視線の先には不遜な笑みを浮かべる生意気な後輩が一人。

「オレの想いはそうそう越えられるもんじゃないですよ。オレはあの人の幸せを願い乍ら一緒に叶えて行く男ですから」

リョーマはにやりと、不二はにこりと性質がまるで正反対の笑いで微笑み合う。

「頼もしいね。手塚を泣かせたりしたら只じゃおかないから。これだけは覚えておいてね」

それじゃ、と不二は軽く手を挙げるようにしてからノブを捻って外へと歩み出した。





「不二、おまたっ!」

不二が部室のドアを潜るのとほぼ同時に駆けて来たらしい菊丸が足を止めた。

「英二、今日は大石と帰るんじゃなかったの?急に一緒に帰ろうなんて、どうしたのさ?」

菊丸の隣まで歩み寄って、一緒に正門へ向けて歩き出す。
話題を振れば、菊丸は拗ねるように唇を尖らせた。

「ちょっと今日の昼に喧嘩しちゃってさ。帰りづらかったもんだからさー」
「明日にはちゃんと謝るんだよ?」

苦笑しつつも溜息を吐いてみせる不二に菊丸はにこりと笑った。

「もっちろん!」

Vサインまでしてくる辺り、菊丸の中では大石との喧嘩について決着はついているらしい。
結局、この黄金ペアの二人は時々喧嘩をしつつも仲が良いのだ。お互いを判り合っている。

そして、明日謝る、と言い乍らも今回の喧嘩の成り行きなどを語り出した菊丸を見て、不二は溜息をまた一つ。

「あーあ。僕も偶には色褪せない恋がしてみたいよ」



















セピア
リョ塚要素が欠片ぐらいしかねえ…!!(驚愕
不二キュンを出すからいかんのかしら…。
でも、写真について詳しいのは不二キュンぐらいしか…!
乾とかも技術としては知ってそうですが。
つか、不二キュンの趣味@写真、というのはどこまでやっているんだろうか…。
自宅現像、自宅プリントしてるのかしら?
…やってそうですけどね。はい。
偶には、弱気な不二キュン。

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