カード
カード。
生成り色。角が丸まっている。
右端に穴が一つ開いていてそこに緑色のリボンが結んである。
そんなリボンを見乍ら、そういえば自分の大切な恋人が好きな色だったな、と何気なく思い出す。
机の真ん中にシャーペンとそのカードだけが置かれている。
このカードには、10年後の自分、つまりは22歳の自分へメッセージを書け、と授業が始まる前に教師が言った。
タイムカプセルに入れて校庭に埋めて、10年後に掘り出すのだそうだ。
なんてチープ。
なんてキッチュ。
そう思ってしまう。
だから、先程から机上の書くことに使われる物は握られる事無く、身を横たえさせたままだ。
明日のことですら判らない。
いつ、恋人に身長が追いつくのか判らない。
いつ、恋人の指に白金の環を通せるのか判らない。
いつ、自分が息絶えてしまうのか判らない。
そんな、判らない事だらけなのに、10年後の自分にメッセージを書けって?
しかもこんな小さいカードに?
無茶に決まってんじゃん、そんなの。
無難に、How are you?から始めてみようか。
調子はドウデスカー?
元気にシテマスカー?
だめだ。
じゃあ、あれだ。
22歳のオレへ。
今よりかっこよくなってる?
身長はいくつになった?
だめだろ。
だめだめ。
書き出しが決まらない。
書くべき内容が決まらない。
アンタなら、なんて書くのかな、10年後の自分に、なんて。
そう思って、その人がそこにいる訳ではないのだけれど、嫌味なくらいに晴れ渡った青空に視線を投げる。
雲がスローに走っていた。
カード。
生成り色。角が丸まっている。
右端に穴が一つ開いていてそこに銀色のリボンが結んである。
そんなリボンを見乍ら、そういえば自分の生意気な恋人が好きな色だったな、と何気なく思い出す。
このカードには、10年後の自分、つまりは24歳の自分へメッセージを書け、と授業が始まる前に教師が言った。
タイムカプセルに入れて校庭に埋めて、10年後に掘り出すのだそうだ。
左手に握ったシャーペンは、24歳の手塚国光へ。と書いたところから進まない。
10年後。24歳。
その頃もテニスをしているだろうか。
左腕は心配のいらないぐらいに回復しているだろうか。
10年後もテニスをしていたい。
10年後もあいつとテニスをしていたい。
10年後にはあいつにはテニスの腕を抜かれているだろうか。
10年後にはあいつも俺に身長が追いついているだろうか?
ああ、そうか、この書き出しの後はそういう事を書けばいいんだな。
そう思えば、左手がスラスラと走り出す。
一通り書き終わって、不意に窓の向こうに広がる青空が目に入る。
痛いくらいの、透き通ったスカイブルー。
ああ、そうだ、お前なら何て書くんだろうな。10年後の自分に、なんて。
手塚の視線も吸い込んで、空はますます晴れ渡る。
1 year
2 years
3 years
4 years
5 years
6 years
7 years
8 years
9 years
at last
10 years
「あった!」
「漸く見つけたか。どれだけ深いとこに入れたんだ」
「オレが入れたんじゃないよ。あの時の教師が適当に詰め込んだんだよ。
うわっ!安っぽい袋ー。これってアレだよね、アンタが炊き過ぎた御飯、冷凍するために詰める袋と一緒だよねー。
よっくもまあ、こんな安っぽいのに10年前のオレの言葉詰め込んでくれたもんだよね。サイテー!」
「いいから。さっさと掘り返した分の穴を埋めておけ」
「ミツも手伝ってよ」
「お前が掘り返す日に来られなかったのが悪いんだろうが」
「そんな事言っても、グランドスラムかかった試合を放って掘り返しに来いって?冗っ談じゃないよ。
しっかしさー、オレの分もついでに取り出しておいてくれたらいいのに。元クラスメートの奴らもケチだよね」
「当時の日頃の行いがよくわかるな」
「またそうやって笑う。感じワルーイ」
「どんな顔だ、どんな」
「フッて、なんかバカにしたような笑い」
「そんなバカにしたような笑いを引き起こさせるバカなお前が悪い。
それよりも、終わったか?」
「へえへえ、どうせバカはオレですよー」
「終 わ っ た か ?」
「ハイ!終わりましたです!」
「どういうキャラだ。それは。
ほら、見せてみろ。10年前の、10年後の越前リョーマへのメッセージ」
「やだ!家に帰ってアンタのと交換で見せる!!」
「なんでそんなに力一杯嫌がるんだ」
「だって、アンタのも見たいもん。10年前の、10年後の手塚国光へのメッセージ」
『
Hi! Mr.Echizen
He was perfectly loved for ten years. ?
-- it is whose thing or, naturally understands Kunimitsu Tezuka who ? Meets.
It is that most favorite man in the universe in the world which I love earnestly !
Doesn't it carry out in fickleness etc?
If fickleness of is done, since this 12-year-old I will not allow !?
well, it should have such a man in a sweetheart and should carry out in fickleness etc. -- although it goes
As for him, ten years after is beautiful as ?
It has not changed. ? or kana which became more beautiful ?
since it is that man, probably it will be more beautiful than the now of 14 years old You who are monopolizing that 24-year-old man are enviable.
Since I am monopolizing the part and that 14-year-old man, they do not matter ?
that man is loved also in when ?
also in when, it is told that it loves to that man There is nothing in the instant which it forgets to Tell ?
That man is loved for ? 24 hours, and 365 days !!
』
(『やあ、越前君。
10年間、ちゃんと彼を愛していられた?
誰の事だか、当然判ってるよね?
そう、手塚国光。
俺が愛して止まない、世界で、宇宙で一番大好きなあの人のことだよ!
浮気なんてしてないだろうね?
浮気してたら12歳のこの俺が許さないからね!?
まあ、あんな人を恋人にもって浮気なんてする筈ないけどさ。
10年後も彼は綺麗なまま?
変わっていない?
それとも、もっと綺麗になったかな?
あの人の事だから、多分14歳の今より綺麗になっているんだろうね。
24歳のあの人を独り占めしてる貴方が羨ましいよ。
その分、14歳のあの人は俺が独り占めしてるから構わないよね?
いつだって、あの人を愛してる?
いつだって、あの人に愛してると伝えている?
伝え忘れてる一瞬なんてないよね?
24時間、365日、あの人を愛していられますように!!』)
『24歳の手塚国光へ。
10年経った訳だが、今もテニスをしているか?
そのお前の立つコートの向こう側には越前はいるか?
その越前にお前は勝ち続けているか?
抜かされていないか?
抜かされていないかといえば、越前の身長はどうなった?
まさか、抜かされているとは思わないが、何事も油断はしないように』
カード。
丁度、聞いていたラジオ番組が最終回で、10年後の自分への手紙をメールで送ってきて!というのに便乗させて頂きました。
その節は、小久保淳平さん、1年半の感動をありがとうございました。
なかなか書けなかった割に結構書いてるリョーマとすらすら書いたくせに少ししか書かない手塚。
リョーマが英語で書いたのは、クラスメートに見られないように、です。
流石に自重したらしいです(笑
10年後に何かメッセージを残すのなら、貴方は何と残しますか?
100題トップへ