悲しみよこんにちは
















いつも、ここで別れる。
いつもの、この学校のすぐ前のバス停で。

部室からここまで来て、暫くバスを待つ。
そうして、バスはあの人を攫ってエンジン音も高らかに発車する。
遠くなっていくバスを見るといつも悲しみが襲って来る。
何とも言えない、寂しさ。

もっと、傍にいたい。
もっと、隣り合って歩きたい。
もっと、もっともっと、アンタと話してたいんだ。




「ねえ、部長。今日、一緒に帰ってよ」
「?  いつも一緒に帰ってるだろ?」

そうじゃなくて。
この人に時々オレの真意が伝わらない事がある。今もそう。
以心伝心の関係にはまだなってないみたいだ。
それとも、オレの言葉が足らな過ぎるの?

「それはバス停まででしょ?そうじゃなくて、もっと一緒に帰ろうよ。アンタの家まででもいいし、オレの家まででもいいから」
「俺とお前の家は反対方向だろうに」

呆れた様な部長の表情に、ついつい、ム、としてしまう。
こんなんだから、すぐに子供だなんだって言われるってことは判ってるんだけど、どうしようもなくない?
だって、この人、本当に判ってない。オレの気持ちも言葉の真意も。

「そっか、部長はオレとさっさとさよならしたいからいつもバス停までなんだ?へー、ふーん、そう。よーくわかったよ」
「…何を屁理屈をこねてる。越前」

宥める様に頭を撫でられて、オレの不機嫌さに更に火がつく。
点火したのはわかるけど、止められないよ。
どうせ?オレは子供ですからね?

「屁理屈じゃないでしょ。オレはただ事実を言ってるだけじゃん」
「どこが事実だ。俺がお前とさっさと離れたいからバス停までしか共に帰らないなんて言ったか?言ってないだろう。俺はさっき何と言った」
「家の方向が逆」
「そうだろう」
「そんなの、体の良い言い訳じゃん」
「そうじゃない」

はあ、と重い息を部長が吐き出す。

「そうじゃない、って言うなら一緒に帰ろうよ。アンタん家までで良いから」
「…部活後で一旦俺の家迄来て、そこからお前の家まで帰るのは疲れるだろう」
「そんなの全然疲れないよ」

アンタと一緒に帰れるならそんなの全然苦にならない。
喩え疲れたって、アンタと一緒にいつもより長い時間一緒にいられるならいい。

「俺が疲れる」

部長の口から出て来た言葉にオレは絶句する。
なに?オレと一緒にいると疲れるっていうの?
うざいわけ?アンタにとってオレって。

「…今でも疲れてるんだ。お前と居ると脈が早くなっていかん」

うっすらと赤くした顔で部長は言う。

「…は?えと、それは…ドキドキしてるってこと?」
「ああ」
「オレにときめいちゃってる、ってこと?」
「…ああ。………そういう、恥ずかしい言い方をするな」

ぷい、と視線を逸らせた目の前の人がどうしようもなく愛しくて、オレは部長に抱きついた。
途端、吃驚して部長が一歩後ずさる。オレが飛びついた反動っていうのもあったみたいだけど。
ふふ、油断しすぎ。

「いいじゃん、もっとドキドキさせたげるよ。だから…オレと今日一緒に帰ろ?」

さっきまでの不機嫌さなんてもうどっかに飛んでいってた。
嬉しくて嬉しくてどうしようも止められなくて、オレは満面の笑みで部長を見上げる。
まだ赤味の残る顔で呆れた様に一つ小さく溜息をついて、オレの背に腕を回し、オレの頭に顎を乗っけてきた。
抱きしめて、抱きしめ返されて。オレってなんて幸せ。
この人を、好きになって良かった。
こんな瑣細な事でオレを幸福にしてくれるんだから。こんなに好きでいてくれるんだから。

「今日…だけだぞ」
「All right,baby」

ホントはそんな事言わずに、明日も明後日も一緒に帰りたいけどドキドキしすぎて倒れられちゃっても困るしね。
取り敢えず、今日だけ、ね。

でも、また、一緒に帰ろう?
時々のオレのワガママを叶えてやってよ。
アンタにしか言えないワガママなんだから、さ。


















悲しみよこんにちは。
別れ道が始まるところが悲しみがやって来る場所。
時々のワガママ…って、越前さんしょっちゅうワガママ言うてるくせに…(殴)
いいのいいの、子供はワガママじゃなくっちゃね!
ボーイズビーアンビシャース!WAHAHAー!

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