返事はいらない
何があった訳ではない。
何も無い。
何も無いけれど、これはもう周期と化していて。
獣でもあるまいに。
発情期なんて。
発情しても肌を合わせたい人は遠い地にいるわけで。
今此所にいないから、余計にそう思うのか。
雄としての本能のせいなのか。
時として、此所に居ない相手を犯してやりたくなる。
相手の限界をも越えさせて。
それは、もう、手酷く。
無茶苦茶に、してやりたくなる。
姦淫に落としてやりたくなる。
勿論、あの人にそんな事を仕出かす気にはならない。
普遍的な方法で繋がる事だけでも背徳を覚えさせるような人間だ。
いつも壊れそうになりながら抱いていた自分の気持ちなんてきっと気が付いていない。
けれど、一匹の雄としての支配欲、性欲はある。大いに。
言えない言葉達はどうしても頭の中から離れていかない。
いかないならば、強引に吐き出すしかない。
それしかリョーマは方法を知らない。
蓄積していれば自分が崩れることなんて目に見えているから。
だから、何度も手の中に収まる携帯電話に打ち込む。
宛先は勿論、宮崎にいる手塚国光。
相手に伝えたい言葉ではないから、書くだけ書いて、送りはしない。
返事など、必要としないから。
ただの独り言でいい。
書いて、書いて。そして消す。
淫ら過ぎる、卑猥過ぎる雄の言葉の群れを。
コレを送っても、あの人はきっと呆れはすれど蔑んだりはしない。
それは救いではあるけれど、また、非道く苛立つことでもある。
蔑まれたいわけではない。
蔑まれたくなんて無い。
ただ、コレは独り遊びであればいいだけだから。
自分の貪欲さを認識するだけの行為でいい。
加速する言葉をも書いて書いて。全て消す。
先刻消した言葉とまったく同じものもある。
それでも書く。そして消す。
リョーマは、独り、満足気に口角を歪めた。
嘲笑の様でもあり、朗笑の様でもある。
再び書いて、全消去してからぽいと投げ捨てた。
「……最低」
餓えている事は認識している。それでいて膨満感に包まれている事も認識している。
一人きりだと言うのに。
「気持ち悪い」
自分が雄という事に?
発情しているという事に?
居もしないしない人に向けて決して返事を乞わない事に?
放り投げた携帯電話が身悶えする様に何度か震えた。
微震ではあるけれど、一人でいるこの状況では大き過ぎる揺れだったから硬質な機械音をさせて携帯を開く。
メールが一通。
送信者は手塚国光。
『待ってろ』
内容はただそれだけ。
何が言いたいのかなんて判然としない。
主語と目的語、修飾語も入れてきちんと文章として完成させて寄越せと言いたくなる。
「…返事はいらないって言ったじゃん」
返事はいらない。
…意味が判らん。我ながら。
何が言いたいのよ、わたし。小一時間問いつめてやりたい。
リョマさんだって思春期の男の子ですから。
好奇心に充ち溢れたソウイウコトに興味のある子ですから。
手塚のこと大好きですから。
……そういうオチなんですか。
独り言系で書くと意味が判られんものが出来上がる。
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