知らないままじゃなくてよかった
愛は寛容にして慈悲あり、
愛はねたまず、愛は誇らず、
高ぶらず、非礼を行わず、
おのれの利を求めず、憤らず、
人の悪を思わず、
不義を喜ばずして、
まことの喜ぶところを喜び、
おおよそ事忍び、
おおよそ事信じ、
おおよそ事望み、
おおよそ事耐うるなり、
愛はいつもでも絶ゆることなし。
今よりも、もっと幼い頃父親の知り合いだかの結婚式に連れられて行った。
自分達、大衆がいる前で祭壇の牧師はそう聖書を片手に読み上げた。
それを聞いた時は、オレは余りに幼稚過ぎて、愛なんてそんなもんじゃないだろうと、そんな素晴らしいものじゃないだろう、と皆が祈りを捧げる中思った。
その頃のオレというのは、求められるばかりで自分から求めたことなどなかった。
唯一求めたものと言えば、せいぜいあの憎たらしいオヤジを打ち負かす力だけ。
そして、求められた愛というのは聖書に書いてあるようなことなんて一つも当て嵌まらなくて。
オレの周りの人間というものはただただオレが欲しいだけで、酷く、自己中心的だった。
……それは、オレが求め返さなかったからそう思うのかもしれない。
いつもの退屈すぎる図書当番をしながら、返却された本の中に聖書があったものだから何気なく手に取ってページをぱらぱらと開いていれば昔見たその愛についての文句が書かれている。
コリント前書13章。
懐かしく思い乍らその文字の羅列を目で追うと、昔思ったことはどこへやら。
とても、納得がいった。
それは…今、オレが人生で初めて愛を求めているからなのかな。
求めて、そしてそれを返せてもらってるからかな。
だとしたら、オレに愛を教えてくれた人っていうのは間違いなくあの人なんだよね。
知らなかった、知ることなんてないんじゃないか、って思ってた気持ちを。
「Love is forever」
最後の一文だけ、そっと言葉にしてみる。
まだ、出会ったばかりだから先の事はわかんない。
わかんないけど、オレ達は永遠でいられるよね?
そこで静かに入口のドアが開く音がする。
ページから目を離して其処に視線を向ければ、丁度考えていた人が凛と立っている。
…ああ、もう、なんでアンタってばこんなにタイミングがいいわけ?
「なんだ、越前、珍しく愉しそうに仕事をしてるじゃないか」
「んー?だってアンタが来たから」
照れているのか呆れているのか、少し分かりにくい顔をして部長がドアを静かに閉めてこちらへやって来る。
オレが手に本を持っているのに気が付いたみたいで、覗き込んで来た。
「聖書、か?」
「うん、そう。…オレ、知らないままじゃなくてよかったよ」
何をだ? そう、いつも通りに緩く首を傾ける。
何をって、決まってるじゃない。
「アンタを、だよ」
オレに愛を与えてくれたアンタのことを好きになってよかった。
この想いを、知らないままじゃなくて、よかった。
知らないままじゃなくてよかった。
…みじかっ!
基本、長いのが書けない私です。
ぱぱっぱーと起承転結が進む。
と、いうか、ボキャブラリーというか、表現方法が思い浮かばない…
物書きとしてまだまだ底辺です。
要は、手塚を通じて好きになるってことを知れて良かった、みたいなことなんですが。
要約で話を考え付くからいかんのだろうか…うーん。
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