恋と愛の境目は、
下心と真心。
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そんなの漢字が存在するアジアだけじゃん。
堀尾からやけに自信たっぷりにそう聞かされた授業中の休みの事をリョーマは振り返る。
「…でも、下心、ねえ」
にやり、と歪むリョーマの口元。
「ねえ、部長はオレに恋してるんだよね?」
「なんだ、唐突に」
本当に唐突に。
部室を開けたら手塚だけが其処に居たから、というのがリョーマの言い分だが、ドアが開かれて直後にそう尋ねられる手塚には何が何やらさっぱりだ。
「どうなの、そこんとこ」
「なんだ、不安にでもなったか?」
くすり、と目を細めて笑う手塚にリョーマはいつもくらりと酔う。
あまりにもその仕草が自分を惹き寄せ過ぎて。
「い、いいからっ。恋、してる?オレに」
「ああ」
質問への些かの疑問を抱きながらも手塚がそう短くではあるが是と答えれば、リョーマは口角を上げた。
そして、後ろ手に扉を閉める、というか寧ろ扉を叩きつける様に閉めて、手塚に飛びついた。
突然に抱きつかれて手塚は半歩後ろに蹌踉けるが、楽しそうに自分の首に擦り付けて来るリョーマの頭を軽く2、3度叩いた。
「こら、離れろ」
「部長、恋は下心っていうの知ってる?」
「愛は真心、とかいう、アレか?」
「なんだ、知ってるの?」
「中1の頃に菊丸がそれではしゃいでいた」
じゃあ、堀尾は成長したら英二先輩みたいになるんだろうか…。アイツが、にゃーとか、言うの?
「・・・きも」
「肝?」
「ううん、独り言。ね、アンタはオレにどういう下心持ってるの?」
手塚の背に腕を回したまま見上げて来るリョーマの眸がきらきらと輝いていた。
そんなリョーマの様を、ぼんやりと子供だな、と手塚は一人思ったことは手塚だけの秘密だ。
「どういうのを持ってて欲しいんだ?」
「えー、それをオレに聞くの?すけべ」
「誰が助平だ…」
というかどういう下心を持っていると思っているんだ、コイツは…。
手塚の頭の隅がきりりと痛んだ。
「生憎とだな、そういう下心は持ち合わせていない」
どこか顔を赤らめ乍らそういう手塚にハッキリ言わせて頂ければ説得力はない。
誤魔化す様にこほん、と一つ大きく咳をわざとらしくも吐いてみる。
それが誤魔化し故と気が付いているからこそ、リョーマはまたにんまりと口角を上げた。
「敢えて言うなら、ずっと好きで居てくれ、というところか?」
リョーマには視線を合わせずにそう漏らす手塚の言葉が聞こえて、無意識か意識的かリョーマの腕に力が入った。
「そんな下心なら幾らでも抱いててよ」
余談。
「で、お前は俺に下心を抱いているのか?」
「え?あー、いや、ほら、オレの気持ちは愛だから」
「ほぅ?」
「真心でアンタが好きだからさ、下心なんてカケラもないって」
「ほーぅ。そうか、お前をやましい気持ちには俺はさせられない訳だな?」
「誰もそんな事言ってないじゃん!」
「そうかそうか。よーくわかった。今度の休みにお前の家に泊まりに行くのはキャンセルさせてもらおう」
「ちょっ!なんでそうくんのさ!」
「俺に下心なんてないんだろう?」
「心とカラダは別!!!」
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恋と愛の境目。そして、心とカラダの境目。
手塚だって下心の一つや二つ。
それのやましさは手塚の紅潮っぷりからご自由にご想像くださいませ。
破廉恥っ!(マテ
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