「本気も本気!インディアンウソツカナーイ」
「何だそれは」



パタン。












主人公不在
















「…………」

リョーマと手塚が去った部室にて、一人着替えを畳んでいた海堂は完全に硬直していた。
そして、その前を大石が教室へ向かうべく部室の扉へ向けて足を運ぶ。

「お、大石先輩っ」

自分の学生服の裾がくしゃくしゃになるくらい海堂に握り締められて、大石の動きが止まる。
海堂を見遣れば、いつものギラギラとした眸はどこへ行ったのか、激しい狼狽の色が見える。

「ど、どうしたの、海堂」
「あいつら…いえ、基、越前と部長は…その」

言いずらそうに顔を俯けた海堂を見て、大石は彼が何を言いたいか悟り、ああ、と漏らした。

「うん、付き合ってるみたいだね」
「!!」

見れば判る様な驚愕の表情。
こんなに表情がくるくる変わる奴だったかな、と百面相の海堂が可笑しくて大石はクスクスと笑った。

「あ、スイマセン」
「いや、海堂がそうやって驚くのも無理はないよ」
「だよにゃー!まずは男同士だしー、手塚もオチビも恋なんてしなさそうだもんね〜」

大石の脇からぬっと菊丸が顔を出した。
それが余りに突然過ぎて、海堂はついつい肩をびくりと震わせてしまった。

「マムシ、俺も判るぜ、その驚き」

海堂の隣で着替えていた桃城がロッカーに適当にレギュラージャージを詰め込みながら頷いた。
海堂は家の躾からなのか脱いだ物はきちんと折り目正しく畳んでしまうが桃城はロッカーに何でも放り込む様にしまう。
同じ2年生とは言ってもこの二人は物の見事に正反対な性質であった。

「ぁあ?」
「俺もさー、前に越前から聞いてはいたんだけどよ、目の前で見るとシャレになんねえなあ、なんねえよ」

頷きを深くする桃城を視線から外して海堂は目の前にまだ立っていた大石に視線を戻した。
大石がその場を動かなかったのは、海堂が裾を握ったままだったからだったのだが。
動かなかった、というよりも、動けなかった、という方が明らかに正しい。

「大石先輩、部長らはいつから付き合ってるんスか?」
「ええと、ついこの間だよ。なあ、英二」
「うん、そうそう。オチビが部活入って2週間くらい経った頃だから」
「そ、そうなんスか」

もう完全に体はクールダウンした筈なのに、海堂の額を汗が伝う。

「あの部長が…」
「なに?海堂もやっぱりショックなの?」

大石の影の菊丸の影から更に不二が顔をひょこりと出す。
3人がこう段々で並んでいる様はなんだか可笑しい。
どこかでこういう並びの3人組のアイドルの写真を雑誌のページで見た覚えがあるな、と海堂とほぼ同じ視点だった桃城は思った。

「ショック……?……ショック、ッスね」

不二の言葉を噛み締める様に海堂の口から言葉が突いて出る。

海堂は、手塚に憧れていた。

それは恋愛感情という事ではなくて、ただ純粋に一人のテニスプレイヤーとして、一人の先輩として、一人の男として手塚に憧れていた。
最強、という言葉に自分の中ではぴたりと見事に嵌る、憧れの人だった。
いつも、あの人の様に強くなりたいと思っていた。

なのに。

越前と付き合っているなんて。

中2という幼い海堂にとって、今は恋愛は児戯の様に思えている。
恋愛などより、テニスの方が現在の彼にとっては面白い。
上を目指し、日々鍛錬することは楽しいし自分の実力の為にもなる。
恋愛なんて、所詮生温い感情だと思っている。
それは偏に海堂の絶対的な経験不足からくる思考なのだが。

そして、自分がそんな馬鹿にしていた恋愛に手塚が嵌ってしまうとは。


海堂は、
ショックだった。


「そうだよね。鳶に油揚げだよね、越前の場合さ」
「いや、正しくは鳶に油揚げを攫われる、だよ、不二?」
「大石、そういう細かいツッコミはいいの!その頭から黄身取り出すよ!?」
「え、いや、あの・・・?」
「不二、大石いじめんなよなっ」

どこの小学生連中だろうか。
目の前でぎゃいぎゃい言い争う3人(正確には大石は呆けているので菊丸と不二の二人が言い争っているのだが)を目の前にぼんやりと海堂は思った。
そんな呑気な思考回路の海堂の周りを喧噪は渦巻き続ける。

「大体さあ、越前のが上なんでしょ!?下剋上ってこと!?それってどうなの!?ねえ!?」
「ねえって聞いて、不二はどう答えて欲しいの!手塚なんて見るからに下じゃん!!ね〜海堂!?」

「は?」

話題がどこからどう変わったのか気付かぬまま、話題の矛先を振られて海堂はまた動きが止まった。

「海堂しっかりして!?手塚は見るからに下だよね!?」
「した?」

この童顔の猫語が常な先輩は何を言っているのだろうか。
下って、テニスの実力のことか…?
そんなの、越前より部長のが断然上だろ…?

海堂薫、13歳。
恋愛のれの字も未だ知らぬ乙女でありました。

「いや、部長の方が上ッスよ」
「「えー!?」」

菊丸、不二の二人が異口同音してしまう程に、二人にとっては海堂の答えは突飛であった。

「海堂、あんな受け受けしい手塚を捕まえてどこが上だというの!?ねえ!?」
「う、うけ?」

いや、部長のテニスはいつも攻め気に溢れた好戦的なテニスっすよ?

「いえ、先輩、お言葉ですが、攻めですよ、部長は」
「「ありえなーーーーーい!!」」

これまた異口同音。
揃いも揃って顔面を掌で覆った。

二人の態度に疑問符が飛び交うのは海堂の方だ。
本気で意味がわからない。
それとも何か、この先輩方は越前のがテニスが部長より上手いと・・・!?

「いえ、絶対に部長のが上です!失礼します!」

いつの間にジャージを畳み終えたのやら、ロッカーにそれを仕舞い込むと海堂は勢い良く立ち上がって扉を潜って去って行った。

海堂が去った後も不二と菊丸はありえないだ手塚は下だなんだと喚いている。

「こりゃタイヘン」

海堂と不二と菊丸。
三者に対して大石が丸で大変そうでもない顔で小さく溜息を漏らした。
と、その隣へ跫も無く乾。

「海堂は完全に勘違いしているな」
「乾。教えてやるべきかな、海堂に。不二と菊丸の言ってる意味」

自分の斜め上にあるいつもと変わらぬ表情の読めない顔を見上げる。
きらり、と角張った眼鏡のレンズが光る。

「いや、いいんじゃないか。俺のデータでは海堂は明日の保健体育で習う筈だ」
「仕組みを?」
「そうだ」
「そりゃ…」



それはそれでタイヘン。




























主人公不在。
22題目の不眠症、の続きのノリで。
…って。
しまった、タカさん出てない・・・!!!!!
あうう、全国のタカさんファンの皆さんすいません。(平身低頭)
いえ、私も大好きなんですよ!タカさん!!!
癒し系で素晴らしいですよね!!
私、青学がホントに好きだー。
次点で氷帝、その更に次点は山吹でしょうか。
亜久津が…あっくんが大好き過ぎて…!!!
単品で順位なら亜久津は相当上です。
リョマと手塚の次ぐらいかも!?いやいや、べたまもなあ、いいんだよなあ。悩むなあ(アフォです。はい)
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