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積み木
















小児科の扉の前を通ると、中には積み木で遊ぶ無邪気な幼児の姿。

直方体や円筒形、そしてカラフルでビビッドな木片で児はとても面白そうに遊ぶ。
一つ積み、二つ積み、何かの形を象る。
それをガラス越しの扉の向こうから手塚は目にするが、それが何を現しているのか、見当がつかない。
幼児というのは、成長した自分達ではとても思い付かない様な突飛なことを思いついたり、考えたり、行動にしたりする。
だから、きっとドアの向こうのあの子が積み上げた物は彼女だけがわかる何か、なのだ。

それにしても、と手塚は長く続く廊下を歩きながら思う。
自分達の恋愛は、積み木とそっくりだ、と。

積み木を積む様に、出会いから始まって、言葉を交わして、好きだと伝えて、手を握って。
自分がしている恋愛は非道く順序良い。
積み木が何かの形を象る時の様に。

そして、自分が積み木の様な恋愛をさせているのだろう、とも思う。

積み木を積むに於いて、最後に積むべきものを積んでいる最中になど積めない。最後に積まれる物は積んでいる最中には異分子そのものなのだ。
そして、無理に積めば崩れてしまう可能性もある。

自分も、同じだ。
今、こうして順序良く相手が恋愛につきあってくれているからいいものの、もしも順序を飛ばして恋愛をされれば、この関係は均衡を失って崩れる。
それはつまり、出会って、すぐに手を繋がれる、というような事だ。
そんなことをすれば、その後の関係は無くなる。
順序良く積み木が積まれているからこそ、現在の良好な関係がある。


けれど、積み木を積んでいればいつか必ず完成する日がくる。
自分達が全部積み木を積み終わった後はどうなるのだろう。
そんな一抹の不安が手塚の脳裏を掠める。
積み終わった積み木のその先はない。
では、自分達も行き着く所へ行けばその先はないものなのか。


否。


手塚は一人小さくかぶりを振った。

積み上げきった積み木の周りにまた別の積み木で何かを象ればいい。
同じ物を作らなくても良い。
寧ろ、同じ形では飽きてしまうだろう。別の物を作れば良い。

それまでとは違う手の繋ぎ方、少し違うキスの仕方。
どこまでもどこまでも積み上げ続ければいい。
部屋一杯に作ったものが占め出したなら、ドアを開けて廊下に続きを作れば良い。
家いっぱいになったなら、外へも造り続ければ良い。
世界がいっぱいになったら、宇宙へ造り続ければ良い。

いつまでも、どこまでも、積み木を積んでいればいい。
造るべきものを積み終わったら、常に別の形の物を。
ひとつひとつ、順序良く。

時に崩れそうになる時もあるかもしれない。
けれど、そんな時は積み木を足してやって、本来造るべきだったものから違う形に変えてやればいい。


どこまでも造り続けてやろうじゃないか。なあ、越前?















積み木。
少し、伝わりにくいのでは…と些か不安でございます。
こう、つまり、ああであれなんだよ…!(判りません)
こういった抽象的っぽいものはもっと語彙を増やさないと、そして使い方や表現方法を知らないと難しいですねー。
精☆進☆
ありがとうございました~

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