Stand by me
















ある二人を巡るそれぞれの立場。

ケースその1、大石秀一郎の場合。

ぺたぺたと踵の高くない靴が微かな音を立てて廊下を進む。
歩く人物は二人。

一人は大石秀一郎。
もう一人は手塚国光。

青学男子テニス部を纏める二人は顧問である竜崎に呼ばれ、職員室へと向かっていた。
呼ばれた内容は部活の事であることは想像に容易い。
月末も近いこの時期から察するに校内ランキングのことであろう。

「大石」

放課後で静まり返った廊下には手塚の声がよく響く。

「なんだい、手塚」
「その…」

呼ばれて大石が手塚へ顔を向けると、彼は何か言い辛そうに少し視線を逸らした。

「相談事?」
「ああ」
「越前とのこと?」

表情も声音も変えることなく大石がそう切り出してきたものだから、手塚は瞠目して逸らしていた視線を大石へ向けた。
そこには、にこにこと微笑んだ副部長の姿。
そんな大石に手塚はまた視線を若干逸らし、心無しか目許に朱を差して、ああ、と短く答えた。

「もっと言えば、損ねた越前の機嫌の治し方、かな?」
「…前々から思っていたが、お前はどこまで察しているんだ」

持ちかけようとしていた相談事の内容を寸分違うことなく言い当てられて、感心したような、どこか呆れも入り交じった溜息が口を突く。

「朝練に来た時の越前の姿を見れば判るよ。随分と荒れていたし、さっき部室に来てもお前の顔を見たらむすっとしてたし」
「…それだけで判るものか?」
「まあ、多少オレの場合は特殊かもしれんないけどね。越前の様子ぐらい、ぱっと見て判らない様じゃあの気分屋とダブルスなんて組めないからね」

くすり、と大石はまた笑み、手塚は大変だな、と苦笑した。

「で、解決法だけど―――――」





ケースその2。桃城武の場合。

生易しさなんて欠片もないボールが顔面目がけて飛んで来る。
そのあまりの勢いに桃城は体を捻って避けた。
頬を少し掠ったらしく、痺れのような軽い痛みがじんわりと残った。

「バカかお前!!!」
「何がッスか」

コートの向かいに立つ生意気な後輩目がけてそう叫ぶと、悪びれた様子もない呟きがポソリと聞こえてくる。

「お前、今、本気でツイスト打ってきただろ!!」
「オレはいつも本気ッスよ?」
「バッカ!今のは軽く人一人殺せる勢いだったぞ!?」
「はい、次いきまーす」

ぎゃんぎゃんと喚く桃城などお構い無し、とばかりにリョーマは新しいボールを手に取って、二、三度コートへ軽く弾ませてから上へ放り投げた。

「待てっつーの!!!」

桃城の叫び空しく、先程の威力を越えるボールが顔へ跳ね上がって来る。
素早く飛び退けると、跳ねたボールは勢いを止めることなく飛んで行って派手な音を立ててフェンスへ食い込んだ。
大きくフェンスが揺れる。

その様を見て桃城の頬を冷や汗が一筋伝った。

「エ、エチゼンサン?」
「…桃先輩、返球してくれないとゲームになんないんスけど」

はあ、と大きく重い溜息をリョーマが吐き出す。

「お、お、お、おまっ!今のを受けろってのかよ!」
「桃先輩のバカ力なら取れるでしょ?」
「ガット突き破って来そうだったんですけど…?」
「いや、さっきのなら大丈夫でしょ」
「お前な、何があったか知らねーけどよ、八つ当たりはよくねーな。よくねーよ」

ここは冷静に話し合おう、とばかりに桃城、必死の説得を試みる。

「じゃ、次はガット突き破る勢いで打ちますんで、ちゃんと返して下さいね?」

ポーン、と再びリョーマの手からコートへボールが打ち付けられる。
ポーン、ポーンと、また二度三度。

「あーあ、桃って不憫な子だにゃー」
「そう思うんなら助けに行ってあげたら?英二」
「えー。俺ツイスト顔面に喰らうとかすっげえヤダ」
「ふふ、たしかにね。まあ、可哀想な桃には帰りになんか奢ってあげようか」
「んー。そだね、せめてそれぐらいはしたげないとね」

先輩としてね、と3年6組の二人は微笑み合った。
そんな二人の視線の先で、ツイストサーブを返そうと試みた桃城のラケットが大きな弧を描いて飛んで行った。














Stand by me。
機械翻訳を通したら『私による立場』と出たのでそのまま参照。
リョ塚を巡る人々の話、ということで。
大石は手塚の相談役。
みちゅは痴話喧嘩なんて経験ないので。
や、別に大石と菊丸がしょっちゅう痴話喧嘩してるとかではなくてですねっ!
菊丸が一方的に不機嫌になったりする時なんかは割とありそうなのでその応用編っていうかですね!
そして桃城は越前の八つ当たられ役。
おー、桃ったらかわいそー。めそめそ。
リョマとみちゅが何で痴話喧嘩して、みちゅがどうやって機嫌を取ったかは皆様の想像にお任せ、ということで。
そしてそんな八つ当たられた桃城をフォローするのはその他の先輩(主に菊丸、菊丸に伴って不二)の役目、という。
何事も助け合いが大切です。
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