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越前リョーマという少年が入部してきて、そのプレイを見て、素直に強い奴なのだと思った。
それが手塚のリョーマに対する印象だった。

その辺に転がっているような中1のテニスプレイヤーよりもずっと強い。
今まで強い相手と戦ってきたのだろうということも。
一目瞭然のプレイだった。

けれど、彼のプレイはどこか模倣じみていて。
何かの影を纏っているように思えた。

「そうじゃないだろう、越前…」

手塚一人のこの部屋には主の声だけが霧散する。
熟考するように組んだ指を額に押し当てて手塚はまた独り言を漏らす。

「それは、お前じゃない」

リョーマに纏わりついている影が誰のものかなんて手塚は知らない。
どこかで見た様な気もするし、初めて見るものの様な気もする。
どちらにしても、あれは『越前リョーマ』ではない。
他の誰か、だ。

「それに固執することはない」

もっと、お前らしくあるべきだ。
コピーよりもオリジナルであれ。

「何が何でも勝たなければならんか」

纏わりついている影を引き剥がすためにも。
それではこれから先へは進めないということを教える為にも。

「コピーはオリジナルには勝てない。お前は、オリジナルになるべきだ」

強さに芽生えるべきだ。
今なら未だそれが可能な場所にいる。
そして自分はその軌道修正を可能な力がある。

ならば。

「正してやるのが俺の役目だろう」

そう思うのは傲慢なことか。
しかし、今、現時点で気付いているのは多分、自分一人。
否、纏わりついている影は知っているかもしれない。
誰か、越前リョーマを変える者がいなければならないことを。

「影のコピーでいるよりも」

ゆっくりと手塚は腰を上げ、足下に臥せていたテニスバッグを掴んだ。

「青学の柱としてお前なりの強さに気付くべきだ」

約束してある時間まであと1時間。
リョーマとの初試合。

負ける訳には行かない。
影をぶちのめしてやらなければならない。
それはリョーマの為でもあり、また、自分の為でもある。
柱である自分の。

アイツは後継としてきっと成れる。
………否。

「後継ではないな。俺とはまるで違う柱になればいい」

手前に引いたドアが軽く軋む。キィと音がした。

「愛しているからな」

力の限り戦う。
気付かせてやる。
コピーでは勝てないのはオリジナルだけではない事を。
リョーマが影を纏って戦っていることを。

あんな影など剥いでやる。
アイツと一生連れ添うのは

「俺だ」

階段を下り切ったところで、手塚はハタと気が付いた。

ここまで影に対して執拗に思うのは、妬いているのだということに。
これまでリョーマは影を追いかけてそして纏ってきた。
越前リョーマを占有してきた。
自分と出会う前のリョーマのほぼ全てを。

「俺も…いよいよ末期かもしれんな」
「あら、国光、おでかけ?」

ひょっこりとリビングのドアから母親が顔を出した。
一瞬、独り言を聞かれたかと思ったが母の表情を見る限り気付かれた節は感じられない。

「はい。夕飯には帰ります」
「そう。頑張ってらっしゃい」

内心、吃驚したが、今の自分はテニスバッグを肩に担いでいるのだ。
誰かと打ち合う、と自然と思ったのだろう。
そう自分に言い聞かせて、手塚は自宅を出た。















影。
影の主は間違いなく越前南次郎。
高架下に向かう直前の手塚な様子、という感じで。
「お前は青学の柱になれ」というのは、決して自分の後を継げというのではなく要は「自立しろ」という意味だと勝手に解釈です。

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