3年間
リョーマと手塚の年齢差は今更言うまでもなく、2年間だ。
リョーマは時としてその時間差を気にする。
時間だけではない。差は身長もあったし、テニスの実力に於いても微か乍ら差はある。
しかし、その差がもっと開いていたら……?
そんな話を切り出したのは、手塚の方だった。
もしも、自分とリョーマの年の差が3年間だったとしたら…?と。
「3年?3年開いてたらアンタとここで会えてないじゃん!」
「そうだな。高等部でも会えないな」
冗談じゃない、と眦を上げて怒るリョーマに対して、手塚は沈着に答えた。
この人はいつもそうだ、とリョーマは思う。
自分だって、普段は喜怒哀楽は激しくないが、手塚と居る時は知らず起伏が激しくなっている。
それだけ、手塚に翻弄されているのだと思うと口惜しく感じる部分がない訳ではない。
そして、それ以上に手塚は自分に翻弄されていることが無い様に思えて、そこにも口惜しさを感じる。
「もし3年間の差だったらどうする?」
表情は変わっていないのだが、どこか楽し気に聞いてくる。
「んー。 でもさ、アンタ高等部に上がったって時々様子見に中等部来そう」
「馬鹿言え。高等部に上がったら俺はまた部の最低年だぞ。そんな余裕あるか」
「アンタなら1年からレギュラー確実でしょ」
高校テニス界も一目置く存在だと、しょっちゅうやってくる雑誌記者からそう聞いている。
そんな手塚ならまさか1年だからと球拾いから始めさせられるなどあり得ない。
「っていうか、高等部に上がるかどうかわかんないよね。海外に行ってそう。
今はホラ、オレっていう将来有望なのがいるから、その先が見たくて行けないだろうけど、オレと出会っていなかったら日本に未練なさそうだし」
「お前の他にも強い奴はいるぞ。…全くどこからそんな自信が出てくるんだかな」
リョーマの発言に呆れた手塚の口から小さな溜息が漏れる。
「中学の部活でオレに適いそうな奴がいなけりゃオレも高校上がらずに海外行くかもしれないし。そうしたら、そこでアンタと会うよね」
「じゃあ、俺が留学しなければ、お前は一人で海外に行って、俺は高等部に進学して、いよいよ会う事はなくなるな」
いやに今日は手塚がつっかかってくる。
そんなに自分と巡り会いたくないのか、とリョーマは毒づきたくなる。
「肘に爆弾抱えた俺の身ではテニスで食べて行けるかどうかわからんからな。真面目に高等部、大学部と進んで商社にでも就職するかもしれん」
「でも、テニスを止めたりはしないよ、アンタは。オレとアンタが場所は違ってもテニスしてるんなら、絶対いつか巡り逢うね」
堂々巡りになってきたこの会話に、もう一度手塚は溜息をついた。
「アンタ、あれでしょ。将来に対して不安抱いてるんでしょ。自分から肘に爆弾抱えてる、っていうなんてさ」
そこでリョーマは手塚との間合いを詰める。
肩が触れあうまで近付いて、手塚の肩に自分の頭を乗せた。
「大丈夫だよ、必ず治るから。治って貰わないとオレがつまんない。アンタを越えたいからオレはこんなに強くなりたいって思ったのに」
少し寂しそうな声音を含ませたリョーマを見下ろせば、意志の強い大きな眼と自分の視線がかち合う。
「アンタがいるから、オレは此所にいるんだよ。アンタだって、オレがいるから此所にいてくれるんでしょ?」
「そうだな、そうかもしれんな」
「アンタはオレに追い越されないようにいつまでも強くいてくれないと困る。オレがアンタを越えたらどうする?」
リョーマからの問いに、暫し手塚は思考を巡らせた。
手塚の答えが出るまで、リョーマは眼を閉じて大人しくしていた。
顔に触れる服越しの手塚の肩の体温が心地よい。
おまけに今日は熱くもなく、寒くもなく、風もちょうどいいくらいに吹いていて頗る気温が良くて過ごし易い。
このまま触れていれば、眠るのにもそう難しくはないだろう。
そう思うと段々眠気が背後から近付いてくる。
「今度は俺がお前を追うかな」
「ん…あ、そう」
「あ、そうってお前な、人の話を聞いているのか?」
「うん。聞いてる聞いてる」
そう返すも、リョーマの瞼は閉じたままで一向に持ち上がる気配がない。
体全体も弛緩しているし、既に眠る体勢は完璧だろう。
「聞いてる、ってどこがだ。聞いてないだろうが」
リョーマの頭を小突いてみるが、反動で少し揺れたくらいでリョーマに変化はない。
「何にしたって、オレとアンタは運命ってこと、だよ」
その言葉を最後に次にリョーマからは穏やかな寝息しか聞こえなくなった。
リョーマの重みが肩に感じられた。
初恋で、恋愛のやり方なぞ一つも知らない手塚にとってはリョーマとの恋愛は何をしても未知のものだった。
相手は自分より年下。けれど自分の領域に収まるギリギリの年齢差。
これは、リョーマではないが運命、という奴なのだろうか。
後1年でも差があれば、本当にこの出会いはなかったかもしれない。
そう思うが、リョーマはそれでも出会いがあったと譲らない。
リョーマが自覚しているよりも、この差は気にするものではないのだろう。
「俺の方が色々と気にし過ぎか」
規則正しい寝息を立てる恋人の顔を覗き込めば至福そうな顔をしていて。
顔にこそ出ないが内心、リョーマに翻弄されている手塚はその寝顔が何故だか小憎たらしくなって、悪戯とばかりに薄く開いたその唇に自分のソレを当てた。
3年間。
隣の芝生は青く見える。
お互い、相手は余裕ぶってるように見えているのです。
本当はどっちも翻弄されっぱなし。
中学生の恋愛ってそういう必死めいたものだと思うんですけど、どうなんでしょう。
ううーっ っていうか、なんか、こう、何が書きたいんだか判らん内容ですいません。
しょーうじーん!
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