全部抱きしめて
越前。もし、俺の耳が聞こえなくなったらどうする。
どうしたの、いきなり。
俺の耳が聞こえなくなったら、お前がいくら好きだと言っても俺には届かなくなるぞ。
そうしたら、どうする。お前は。
アンタって脈絡もなく話し出す時があるよね。
それはどうでもいい。……どうする?
えーと、アンタの耳が聞こえなくなったら?だっけ。
うーん。困るね、それは。
オレの言葉が届かない以上に、アンタの声が聞こえなくなるじゃん。
耳が聞こえなかったら満足に喋れないし。
そうだな。
でも、いっそ、聞こえなくなってもいいかもしれないね。
? どういう事だ?
別にアンタの不幸を望んでいる訳じゃないからさ、そんな顔しないでよ。
そういう意味じゃなくて。
耳が聞こえなくなって、オレの言葉が判らなくなったら一つ減った感覚の分、他の感覚でオレの気持ちを捉えられる様になると思うから。
…ごめん、やっぱ前言撤回。
アンタの声が無くなるなんて嫌だ。
だって、オレはアンタの声も愛してる。
アンタの躯も愛してる。
アンタの魂だって愛してる。
息も、鼓動の一つだって、何もかも、全部愛してるから。
なにか一つ欠けたら、耐えられない。
残りの部分で形成しているアンタもきっと愛せるけど、無くなった部分はオレの記憶の中でしか残らないと思うし。
今、目の前で、アンタの全てを愛したいんだよ。
オレの全身で、全感覚でアンタを受け止めたい。
だから、声すら、聴覚すら、無くさないで。オレの為に。
…越前。
もっと、アンタもオレを感じてよ。
もっと、愛してよ、オレの全てを。
今以上に、もっと。もっとさ。
言葉だけにオレの気持ちを感じないでよ。
今、こうしてアンタに触れてる。見詰めてる。隣にいつも居る。
だから……そんなに不安にならないでよ。
言葉だけでしかオレの気持ちって伝わってない?
…言葉には限界があると思った。
限界は、あるよ、きっと。
好きだって言っても愛してるって言っても、いつか慣れちゃう時が来るかもしれない。
来るかもしれないけど、オレはそれでも言うよ。
言葉だけじゃない。
オレの全てで。
アンタに伝える。
だから、それが伝わる様に、アンタもオレを愛してて。
もしもオレの気持ちが判らなくなったら、怒ってもいい、叫んでもいい、詰ったっていい。
判らないなら判らないって言って。
でも、不安にはならないで。
オレの気持ちを疑わないで。
アンタの中にオレはこの世で一番存在している場所なんだから。
判った。
けれど、お前の方こそ俺を不安にさせるような事はするな。
いつも、俺だけ見てればいい。
俺だけ考えていればいい。
俺だけを……愛していれくれ。越前。
仰せの侭に。Honey。
全部抱きしめて。
リョーマに全部抱きしめられて手塚は生きています。
と、いう、そういう話。
シリアスなんだか、ただの甘々なのか。