やんわりエロあり。ダメな方は回れ右が吉。


















































スペシャルディナー
















迫り来る宵闇から逃げるようにリョーマは玄関の戸をくぐった。
放課後遅くまでこってりと部活で絞られ、体はすっかり疲弊していた。

気怠い体を引き摺り、リョーマは靴を脱いで玄関をあがった。

すでに胃袋は空腹を訴えている。
リョーマはいつも通りに夕餉を求めてリビングのドアを押し開けた。

「かあさん、今日の夕…」

ぎい、と微かな軋みをあげて開いたリビングの扉の向こうにリョーマはここには存在し得ないものを見た。
本来なら暖かい食事と母親の明るい笑顔があるはずなのに。

「飯、なに…」

バタン。
一瞬の硬直のあと、リョーマは静かに扉を閉じた。

ぴったりと閉じた扉にこれまたぴったりと背中を寄りかからせて、自分が目撃したものを思い出す。
何度思い返してもおかしい。
あれがここにいることも。
その『在り方』も。

その回答はいくら考え直しても変わることはなかった。

数分の後、リョーマは意を決してもう一度扉を開いた。
ゆっくりゆっくり。
何かを恐れるかの様に。

また小さな軋みの音をさせてリビングの扉が開く。
まずは僅かに開いたその隙間からそろりと覗き込むようにリョーマは中を窺う。

やはり、それは変わることなく居た。

「…」

リョーマはもう一度だけ考える。
しかし、出てくる答えは『おかしい』ということだけ。

越前家の食卓に、
ちょこん、と慎ましやかに、
手塚が正座して座っていることなんて。

何をどう正そうとしてもおかしい。変過ぎる。

「…部長」

しかし、目の前に広がる光景はいくら瞬きをしても、目を擦ってみても消えることはなかった。
だから、リョーマは手塚の前に全身を晒した。

リョーマの声にずっと床を捉えていたのだろう、俯いていた手塚の視線が反応を示した。

何故、ここにいるのか。どうして食卓なんぞに畏まって座っているのか。
おかしすぎる事の真相を質そうとしたリョーマの言葉は向けられた凛とした視線に囚われて喉の奥に帰ってしまった。

「おかえり」

リョーマの動揺とは裏腹に手塚はいつもと変わらぬ涼しげな表情の起伏の無い顔でそう言った。
思わず、リョーマも吃りつつも、ただいま、と返した。
端から見ればとても奇妙な光景だっただろうと思う。

「「…」」

そのまま手塚はリョーマを見詰めるだけで、そしてリョーマはその視線に言葉を奪われて、暫しリビングは沈黙が支配した。
二人の位置は変わらぬまま。
一方は扉の内側へ入ることもなくぼうっと突っ立って。
もう一方は木製のリビングテーブルの上で正座をして。

二人の間に、そしてリビングに沈黙が訪れてからどれだけ経っただろうか。

「あ、あの、部長…」
「越前」

静けさに先に耐えきれなくなったリョーマが漸く切り出した言葉を手塚がぴしゃりと一言で遮る。
名を呼ばれて思わずリョーマの身が跳ねた。鼓動がいつもより早い気がする。

そういえば、とリョーマは今更ながら気が付いた。いつも通りの筈の手塚のどこかに違和感があることを。
人様の家の食卓の上に正座で居る、という行為もおかしいが、それ以上に手塚自身がどこか変だった。

「いつまでそこにいるつもりだ」

この人の声は綺麗だとは思っていたけれどこんなに艶を帯びていただろうか、とか。

「さっさとこちらに来い」

手塚に促されてリョーマはリビングに入った。後ろ手に扉を閉める。
一歩一歩手塚に近付くにつれ、比例するかの様に脈が早くなった。

喋る度にちらりと見える暗い口内のあの人の舌の赤はあんなにも鮮やかだっただろうか、とか。

「ぶちょ…」

拭えない違和感を告げようとしたリョーマの言葉はまた喉の奥に消えた。
自身の喉、ではなく、手塚の喉の奥に。

テーブルの縁ぎりぎりまで近寄ったリョーマの唇に手塚がいきなり噛み付いてきた。

突然の事に瞠目するリョーマに対して手塚はしっとりと目蓋を伏せて、相手を味わう様に一度離れてまた唇を重ねてきた。

頭の中を整理しようにもどうにも目の前で淑やかに揺れる手塚の睫毛に思考能力を奪われる。
回らない頭が出した答えは、取りあえず誘われているらしい、ということ。

据え膳食わぬは。

今度は啄むようなキスを仕掛けてくる手塚の後頭と腰に腕を回して、リョーマは手塚の中へと舌を侵入りこませた。
それを待ち構えていたかの様に手塚の舌が空かさずリョーマのそれに絡み付いてくる。
一度絡んでは少し引いて、
そしてそれをリョーマが追って、
捕まえて。
幼子がいやいやをするかの様にまた手塚の舌が逃げ、
またリョーマが追う。
そしてまた捕まえれば今度は逃げる素振りなど一切なしでリョーマに応えた。


こくり、と手塚が何かを嚥下する音が不意に耳に届いてリョーマは自分が彼を食卓の上に押し倒している現状に気が付いた。
キスに夢中になっている間に自分も食卓へと上っていたようで、先の音は自分の下になっている手塚へと重力のままに降ったリョーマの唾液を手塚が飲んでいたらしい。
飲みきれなかった残りは手塚の口端から無色の筋道となって零れていた。

そしてリョーマの首の後ろには縋るように、自身へとリョーマを押し付けるように回された手塚の腕。


据え膳食わぬは。


齧り付く濃厚なキスを施しつつ、リョーマは腰に回した掌で一度摩り、キスの隙間から手塚の声が漏れた瞬間に彼の背を浮かせて、そっと薄いシャツの内側へと忍ばせた。

触れる肌が、熱い。
指先から伝わる彼の熱にこちらも灼かれそうだ。

そのまま、リョーマの指は背を這い上ろうと蠢こうとした瞬間、手塚の方からキスを退けられた。
思わず不満そうな顔色になるリョーマの耳元へと手塚は愉悦気味な声音で囁いた。

遊びはいいから、と。

そしてすぐにリョーマは左手を手塚に掴まれ、下肢へと導かれた。

くどいようだが、


据え膳食わぬは。


恥なのだ、男の。

「どういう風の吹き回し?」

にやりと不敵に微笑みつつも膳を据えられたからにはリョーマも後には退かない。
むしろ嬉々として頂戴させてもらう。

「…っん」

手塚のジッパーを引き下ろし、腰元のボタンも片手で外して中へと触れた。
自分でそうするように誘ったけれど、流石に手塚からも甘く色付いた吐息が短く漏れた。
そしてそれと呼応するかの様に、手塚に触れたリョーマの指先にもじんわりと湿る感触が灯る。

ずるり、とリョーマは手塚の下肢が纏う一切の衣服を彼の膝元まで剥いだ。
その後には早くも頭を擡げ始めているもう一人の手塚自身が顔を出す。

現れた彼にリョーマは指を這わせ、まずはゆっくりと上下に扱いた。
リョーマの動きと連動して手塚の息も上がる。

「…ッ、
んっ…あっ!…イイッ」

いつもなら自らの手で口元を覆って弾むその声を隠そうとするが、今日の手塚は悶える様にリョーマの髪を荒々しく掻き乱し、リョーマの眼下で遠慮することなく喘いだ。

「もっと……そこじゃ、ない…そこだけじゃなくて…っ!あっ、
んんっ、そこ、そこだ……ふ……ぁあっ!」

そして、一際大きく上がった聲の後、まだ羽織ったままだった手塚のシャツと全く手をかけていないリョーマのシャツとに勢い良く精液が跳ね飛んだ。
手塚の蜜はみるみるうちに薄い染みになっていった。

ふとその染みを見遣って、リョーマは颯々と自らのシャツを脱ぎ払い、テーブルから床へと投げ捨てた。
薄い布は音を立てることもなく床に墜落した。

そして、少しばかり荒々しく次は手塚のシャツのボタンを外し、爆ぜてばかりで肩を上下させている手塚の腕を抜いて同じ様に床へと投げ捨てた。
遂に露になった手塚の生身の肌にねっとりと舌を這わせつつ、靴下も手塚から取り去り完全に一糸を纏わぬ姿にさせた。

その姿を恥じらい隠すこともせず手塚は自分の上を這い回るリョーマの感触に頬を上気させて、切なげに眉を顰めた。

「遊びは、いい、と…」
「へえ?その割には上も下も固くなってるみたいだけど?」

揶揄で口角を歪めつつ、リョーマは片手は手塚の乳首に、もう一方の手は手塚の股間へと這わせた。

「ぁ、ぁあっ!ん、
ふぅ…っ

カリ、とリョーマは胸にかけた指で掻けばびくりと手塚の身が跳ねた。

「オレも、イっていい?」

胸には爪を立てつつ、下では裏の筋を撫で擦るようにねっとりと攻めながら手塚に問えば、零れ落ちそうなまでに潤んだ瞳を薄らと覗かせて、こくりとひとつ頷いた。

手塚からの従順な回答に嬉々として、早速、と手塚の腰を抱え上げるリョーマの肩に手塚はふわりと触れた。

「上が…」
「え?」

照れからではなく、極度の興奮から頬を色付かせた手塚がリョーマの肩にかけた腕に力を込めて、リョーマを後ろに倒した。

「お前の、上がいい」
「…ぇ?」

ぐるりと視界が回って、見慣れたリビングの蛍光灯の明かりがリョーマの瞳を刺す。

「お前の、上を取る、の、は気持ちがいい。テニス同様に、な」

手塚は、リョーマを見下ろしつつ、荒ぐ呼吸を整えるかのように一際大きく息を吸い込んだ。
ゆっくりと上下する手塚の胸を見上げながら、リョーマは最初の疑問を何とはなしに思い出した。

どうして手塚がここに居たのか。

もしかして。

手塚がもう一度息を吐き出した瞬間、ある答えがリョーマの脳裏を掠めた。

「夢?」

不意に零れたその一言に、手塚はリョーマを不思議そうに見詰めた。

「どうした?」
「夢、なんじゃないの?アンタがこんなに積極的だなんてことが一番あり得ないよ」

恋人の家で。
自分から誘惑して。
噫することも無く聲を巻き散らかして。

「ねえ、部長、ちょっとオレの頬叩いて」
「…マゾだとは知らなかったな」
「い、い、か、ら。ちょっとでいいから思いっきり叩いて」
「…マゾ」
ぼそり。
「違うって!」

眼下でぎろりと睨んでくるリョーマの顔に、ふむ、と手塚は思案顔。

「まあ、それはそれで新しくていいか」
「何が」
「だからマゾが」
「違うって言ってるじゃん!」
「では、遠慮なくやらせてもらうぞ、マゾ」
「マゾじゃな…っ!」


パァンッッッッ!


甲高く、膚を打つ音が強かにリビングに響いた。
リョーマの頬にはくっきりと手形の跡。

遠慮なく、の言葉通りに打たれたせいか、視線の先の手塚が一度歪んで、脳すら揺れた気がした。

しかし、それも一瞬ですぐに視界はクリアになった。
そして手形と同じくじんわりと痛みがする。

「…夢じゃない」

痛みを再確認するようにリョーマは頬に手を当てる。
その目が涙で滲んでいるのは頬を叩かれた痛みからか、夢ではない事を実感した喜びからか。

「部長っ!ヤるよっ」

頭の部分にアクセントを置いて身を起こそうとしたリョーマの肩を手塚が押さえつける。
はてな、とついリョーマの頭に疑問符が浮かぶ。

ニ、と手塚の顔に笑みが浮かんだ。
どこか如何わしい香りのする笑みが。

「俺が、お前の上だ」

手塚はゆっくりとリョーマの下腹部の上に自らの下肢を備えた。
そしてそのまま流れる様に滑らかに、腰を落としていった。

リョーマの性器の先端に独特の皮膚の皺の感触がする。
窪み。

それを感じた瞬間に、リョーマは食われた。
手塚の下方の口腔に。

ずちゅり、と奇妙な粘液の音がする。
それが自分の精液を助けにして手塚が腰を沈めてくる音だと気付くのに1秒もかからなかった。

リョーマの腹の上では天井を見上げ、喉元を反らせて喘ぐ壮絶なまでの手塚がいる。

「っぁ、ふ…っ
、あっんんっ、ぁっ…!」

少しずつ、少しずつリョーマの根元へ向けて手塚の腰が下りてくる。
その度に、ねちりとした液の音と、響く手塚の嬌声。

「いい眺め…」

手塚自らも腰をくねらせ、リョーマ自身も腰を動かす。
リョーマの腹の上で自分で抽出を繰り返す手塚を眺めながら、リョーマの口からぼんやりとそんな言葉が漏れる。

「ぁ、あ…っ。
ふ…っ、ぁふ…んんっ」

手塚の内のある一部分をリョーマが掠める度、手塚の躯はぴくりぴくりと小さく身を震わせる。
その部分にリョーマ自身を擦り付けているのは手塚自身だと言うのに。
腹上の景色は剰りにも卑猥すぎた。

そのうち、手塚は腰を上下に動かしたまま、自らの性器にも手をかけた。
腰の動きと連動するようにそれを上下に扱く。

「アンタ、エロ過ぎ…」

父親の隠し持つAVの女優も裸足で逃げ出す様な痴態を繰り広げる手塚を見上げながら、リョーマも息が上がる。
頬もすっかり上気していた。

何度目か、もはや判らない程に掠った手塚のイイところに、そして手塚自身がそこにリョーマを一際強く押し当てた時、掌中に掴む自身から零れた先走りの液が手塚の手を濡らした。
限界が、近付いてきているらしい。

リョーマもそれを感じ、腰の上げ下げに夢中になっている手塚の隙をついて身を起こした。
それが動きとして手塚にも伝わったのだろう、甲高く声が響いた。

そして、そのままリョーマは手塚を組み伏せた。
立場を再び逆転させられた手塚は苛立ったような、けれどすでに涙で蕩けさせられた淫ら過ぎる瞳でリョーマを睨み上げた。

そのまま上で最後まで行きたかったのに、とでも言いたいかのように。

リョーマは汗すらもじんわりとかき出した顔で、にこりと笑った。
限界が近いリョーマのその笑みにはどこか少し余裕がない。

「アンタの下にいつまでもいるなんてまっぴらだね」

そして、一度リョーマは手塚の中から自身を抜いた。
動く度にずちゅ、ずちりと猥らな音をさせていた手塚の孔はまたも鳴った。

ふ、と軽く息を吐き出して、心構えを。

パァン、と肉を打つ音がした。

その次の瞬間、










「痛いっっっ」

突如としてリョーマの視界が開けた。
目の前には、手塚。

けれど、先ほどとは打って変わって憤怒の表情の、という言葉を付け足させて頂く。

「え?あれ?部長?」
「あれ、じゃないっ!」

パァンッ

リョーマは頬に痛みを感じた。

「お、お前は…っ!」
「え、ちょっと、待って、なんでっ」
「なんでもクソもあるかっ!どんな夢を見てたかしらないが、覚悟はいいな!?」
「うそ、夢じゃないって!」

ぱぁん

「痛いったら!」

涙目でリョーマは手塚がもう一度振り下ろそうとしていた腕を取り押さえた。
手塚も、なぜか涙目だ。

「ゆ、夢じゃないって。部長が、オレんちのリビングで積極的で、ぶたれて、ちゃんと痛くて…っ」
「そりゃそうだろう、ちゃんとぶったんだからな。それで起きないお前が悪い」
「…ま、待って、本気で意味わかんないんだけど…っっっ」
「問答無用っ」

ぱんっ

























スペシャルディナー。
えっちい手塚。最強のごちそうかと?(疑問形?)
夢オチと見せて実は夢落ち。結局は夢オチ。
きっと、越前さんは手塚家に夕飯のご相伴に預かりにきてたんです。
夕飯の用意ができるちょっとの間に眠り。夢の中でスペシャルディナー。正常位と騎乗位。
騎乗位好きです。(誰もお前の好みは聞いてないよ)たちばっくも好きだ。(節操ないだけじゃないんですか)
エロがぬるいなあ…ぼんやり。
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