99パーセント
「…の確率、99%」
「…何の確率だって?」
「いや、独り言だ。気にしないでくれ、手塚」
「…相変わらず変な奴だ」
「相変わらずは余計だよ、部長様」
「…変なのは認めるのか?補欠」
いつも通りの青学男子テニス部テニスコート。
レモン色よりももっと鮮やかな黄色の球の弾むグリーンのコートを前に緑色のジャージが証拠の補欠の乾とブルーのレギュラージャージの手塚とが立ち並んでいた。
「補欠言うな、28歳」
「俺が28ならお前も28だ。同学年」
「…26歳」
「あまり変わらんな…」
手塚達から一番近いコートから、弾かれ損なったボールが足元へと転がってきて、乾がそれを拾い、コートへと返してやる。
「…今ので、0-30、か…」
「成長が目紛しいね、我等のルーキーは」
口角をふと吊上げてどこか愉悦気味に乾はお決まりにノートを取り出した。
「…誰が『お前ら』のだ……」
ノートに没頭し出した乾の隣で、こっそりと手塚は呟く。
黙々と書き続ける部内一の長身の彼はそんな手塚の様子に気付く気配はない。
「…」
「……」
尚も没頭する彼のノートにはそういえば何がどういう風に書かれているのか、いつもならば気にしないのだけれど、今回は多分ネットの向こうの1年生ルーキーの事なのだろうと思うと、少し気になる。
それとなく、それとなく、気の無い素振りで少し踵を上げて、こっそりとページの中を覗き込む。
しかし、もう少しでページ内が見えそうなところで、突然ノートを閉じられる。
横目にしていた視線をさっと正面に向けて、上げていた踵をスローに戻す。
けれど、データを取ることが日課というか趣味とも言える彼はそういった些細な事にも聡い。
手塚の踵が大地に降りたところで、乾はまたノートを開いた。
「…先ほどの発言は訂正しないといけないかな…」
「だから、先刻は何の確率なんだ…?」
「計算はわざわざし直さなくても良いだろう…」
「…おい…人の話を…」
聞け、と手塚が最後まで言うよりも前に、ノートへと向かっていた乾の視線がこちらを向く。
真四角のメガネのレンズがきらりと光った。
「手塚が越前にぞっこんの確率、100%」
「…っ!?」
「越前が目の前でテニスし出したら、視線は釘付けだし。越前の事をノートに書いていればとても気になる、と」
「…勝手なことを…!」
「越前は気付いてないんだろうけど…、部活中くらいは控えて欲しいものだね、部長殿。」
「…気付かれてたまるか」
むすっと唇を尖らせた手塚に乾は走らせていたペンを溜息混じりに止めた。
99%に横線が引かれて、120%、の文字が最後に綴られていた。
「大木!今すぐ部長から離れナサーイ!」
「大木とは失礼だね、越前。自分が160台にもまだ手が届かないからって、僻は醜いよ」
「ツイストその顔に叩き込むぞ!?」
「やれやれ…どちらもどちらだな」
「…」
「ねえ、そう思わないかい?手塚」
「…乾、グラウンドを走ってくるか?」
「5周で手を打たないか?」
「20周でどうぞ」
「やれやれ…」
後ろ髪を掻きながら、そうして乾はその場を辞した。
99パーセント。
パーセントといえばこのお方。
当たり前にご出演で。
リョ塚はお互いにめろめろの方向で。
やーい。(何
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