シュークリームをふたつ
日本からは遥か西方、華麗で残酷な歴史も背景に持つフランスの御国が発祥の地。
chou a la creme。
彼の名は正しくはそう云われるらしい。
小麦粉を卵で練り、焼成により内側を空洞にした皮の中に、クリームを詰めた洋菓子。
概要を述べればこんなところになる。
もっと踏み込んで言わせて頂くと、シュー生地がふくらむ原因は加熱された水蒸気によるもので、その膨らみを小麦粉に含まれるグルテンという成分が受け止め、適度なところまで膨らんだ頃、生地にまぜた卵が焼けて凝固し、そのままの形で静止し、シュー生地が完成する。
キャベツに似ていることを由来にこの名を冠され、現代でも人気の洋菓子のひとつであろうと思われる。
生誕地より海を幾つも越えた東方のこの小さな島国に伝来した事については、明確な当時の記録はないが、幕末に仏人が営む西洋菓子店が在ったとの逸話が有り、幕末の頃には伝来していたのではないかという説がある。
大々的にこの国で売られ出したのは、明治維新の後の明治7年の頃。シウ・アラケレームという名で当時は売られていたらしい。この時代は今の様に一般的に食されるものではなく、外国人や上流階級の人々のみが口にできるという品であった。
一般大衆に広がっていったのはそれから十数年も後の明治20年代も後半の事。
その頃には元の名の内の「ア・ラ」が省略され、かシュークリーム、と日本語化を果たし、現在の呼称で売られていたとか。
余談だが、シュークリームは英語では通じない。
仮に英語圏でシュークリームとオーダーすれば靴墨が出てくるだろう。
英語ではクリームパフ。
独語ではヴィンドボイテル。
伊語ではビニエと呼ばれている。
発祥の地はフランスだと先述したが、その誕生秘話には諸説在る。
諸説の一角を紹介させて頂けば、始めからシュークリームを作ろうとしたのではなく、製菓に失敗して膨らんだ生地に空洞ができてしまった為、何かを詰めようと考えた、という説。
大富豪の家の令嬢がフランスに嫁いだ時、連れていった侍従の中の菓子職人が作った製菓の中にキャベツに似た形のものが『クリームの様なキャベツ』イコール『シュー・ア・ラ・クレーム』、という名で呼ばれた、という説。
そんな歴史や蘊蓄とカスタードクリームとホイップクリームをたっぷりと含んだシュークリームと手塚を目の前にリョーマは思案顔。
目の前のキャベツ形の洋菓子はこれといって特別な能書きやブランドも背負わない至って普通のスーパーで買われてきたもので。
愛息子の友人が家に来たから、と母親がお茶請け程度に冷蔵庫から出してきたもの。
一人に一つずつ。白い皿の上にはシュークリームが行儀良く二つころりと並んでいた。
「…アンタにシュークリーム2つって、すごいやらしい…」
「は?」
相手の言葉の真意もあまりよく解らぬまま、手塚はシュークリームに手を伸ばした。
時刻はおやつ時の午後3時過ぎ。
シュークリームをふたつ。
シュー2つと手塚の組み合わせはエロいよね、というだけのお話です。
それだけではどうにも話が引っ張れないので、蘊蓄をネットから収集。
何がどうエロいとか、そゆとこは突っ込まんでください…ただの猥談です。
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