夜景
「……ッハ……………ァ」
かれこれ、3回、爆ぜてリョーマはくったりと手塚の肌の上に倒れた。
少年の身を受け止める手塚側も、やっと力を抜いた。
「おい、越前、今何時だ?」
「え?さあ…。時間なんて気にしてなかったから……」
まだ下肢は繋がったまま、リョーマは顔を擡げて、自室を見渡す。
手塚の衣服を剥ぎ出した頃はまだ茜色だった窓が、すっかり漆黒で染まっている。当然室内も暗鬱としていて、ベッドヘッドにある時計の針もよくは見えなかった。
「外は暗いみたいだからもう夜なんじゃないの?」
振り返り気味に窓にもう一度視線をやれば、遠くのビルの明かりが疎らに点いているのが解る。
「夜なんじゃないのか、…って、家の方は誰も呼びにこなかっただろう?お前の家は夕飯はいつも何時頃なんだ?」
「えー…?普通、このくらい外が暗い時には食べてたと思うけど」
「なら、おかしいだろう」
「最中にドア前までは来たんじゃない?」
「…っな!?」
がばりと勢いで身を起こせば、リョーマも、手塚の中に入っていたもう一つのリョーマもずるりと滑った。
途端、引き抜かれた感触に手塚の口から嬌声が漏れる。その声にシーツまで滑り落ちたリョーマは愉悦気味に表情を変えた。
「ドア前まで来て、中の音で勘付いて下に戻ってったんじゃない?それで菜々子さん気付いてるんだと思うな、オレ達の関係に」
「き、気付いてる……!?」
越前家を訪れる時に度々見かけるリョーマの従姉だと言う彼女の顔が脳裏を過って、手塚は頭を抱えた。
微笑みかけられる度に何かの違和感を覚えていたのはそのせいだったのか、と偏頭痛は酷くなった。
「ねえ、風呂行く?お互いベタベタしてるし」
よっ、と短く声を上げてベッドから下りて辺りに床に散らばった衣服を掻集め、着衣を始める。
その間も手塚が項垂れた姿勢から変わることはなかった。
「ねーえ。行かないの?」
上から下まで、手塚と睦言を交わす前の状態に戻り、リョーマは這い上る様にベッドへと上がって、未だ項垂れたままの手塚の顔を覗き込んだ。
その瞬間に、涙目で睨んでくる視線とぶつかる。
口をヘの字に緩く結んで涙目で睨んでくる手塚に、お約束な迄に下腹から迫り上がってくるものがリョーマにはあり、堪らず手塚の目頭目掛けて唇を落とした。
突如降ってきた唇に、居竦む様に手塚は両の目蓋を下ろす。
細い睫毛に付いた水滴をリョーマの舌が舐って行って、手塚の身は震える。
行為の後は最中以上に躯は敏感過ぎた。
まだ、余韻の残る躯では、リョーマが触れてきただけで過敏に反応を見せる。
終いにはふるふると小刻みを続け出す手塚の肩を確りと掴んで唇を寄せてくる。手塚も、甘んじてそんなリョーマを受け止める。
次第に深く入り込んでくるリョーマにも応えて、怖ず怖ずと延ばした腕をリョーマの首に絡めた。
合わせた唇からまた熱は広がって行くが、リョーマがブレーキは踏ませない。
背後へと傾斜していく体を感じつつも、手塚はキスにのめり込んでいった。
一頻りの口腔での戯れを終えさせて、リョーマから唇を離す。まだ触れていたかったのか、名残惜しそうに手塚の舌がリョーマへと伸びるが、絡んでいた相手はそんな手塚の首筋へと落ちた。
ひとつ、強く吸われてそこに熱が集中する。
刺激に耐える様に一度深く目蓋を閉じ、そしてまた薄らと開く。
シャツを着たリョーマの肩越しに、窓に嵌った暗い夜の景色が手塚の瞳を染めた。
どうやら、今晩はあのフレームの中の夜景しか見られないらしい。
そんな予感も、手塚はぼんやりと受け入れてリョーマを感じ始めた。
夜景。
やりまくりの日々。
越前さん、服着た意味ないし…。ショックで動かなかった手塚がいけないのか?きっとそうだと思います。
100題のアンケ(ranking)でなんで菜々子さんは二人の関係を知っているんでしょう?というQを頂いたのでそれの回答の意味も込めまして。
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