ハイアーハイアー
















こくこくと2、3口飲んだ後に口を離したと同時、手塚の手に握られていたドリンクボトルは奪われ、背後に忍び寄っていたリョーマが断りも無く飲み下していた。
手元から頭上、そして背中をやや反らしたところに、溌溂と嚥下し続けるリョーマの顔を見付け、手塚は己の所有物を無断で奪取したことを怒るでも無く、返してくれと催促するでも無く、ただリョーマを見上げていた。

そうこうしていれば、リョーマは満足するだけの量を飲み切ったらしく、小さく息を吐き出して口元を拭った。そして眼下の手塚を見下ろすと、手にしていたボトルを「はい」と悪びれた様子も無く返す。手塚も腕を伸ばしてそれを受け取る。
その後も手塚は尚もリョーマを凝ぃっと見上げ、リョーマはそんな手塚を不思議そうに見下ろした。

「なに?」
「部長、ひょっとして、身長伸びました?」

背?と思わずリョーマは尋ね返す。そんなもの、まるで気付いていなかった。改めて手塚を見下ろせば、何となくいつもより低く見えるような見えないような。

「どうだろ…伸びたのかなあ。あんまり実感無いけど」
「…俺の背後から俺が手に持ってる物、あっさり取れるくらいですもんね」

高いですよね、と続ける手塚の声は僅かばかり恨みがましそうに聞こえなくも無い。

手塚の背は確かにリョーマとは大きな差があるけれど、年齢を考えると然して小さい方では無い。寧ろ、標準よりは少々高い感じがする。
その年でその身長なのだから、未来は明るいだろうに。今のこの身長差はリョーマが2年先に成長期に入ったということと、単なる個人差の成せる技。
まあ、手塚としては現状の差にふと気付き、ちょっとばかりの嫉妬心を覚えたに過ぎないのだろうけれど。

手塚もすぐに伸びるよ、と慰めをかけようとしたけれど、自分より頭ひとつ分以上低い位置から見上げ、ともすれば拗ねている様に見受けられる手塚の顔色を見て、フォローを入れる気はちょっとした嗜虐心と切り替わる。

「手塚が手に持ってるものを取るのもこの背丈だと簡単だけどさ、背が高いと出来ることってそれだけじゃないんだよね」

に、と笑うリョーマと、はてなと小首を傾げる手塚と。相反する両者の間に、

「………!!」

リョーマの方から両腕がにょきりと手塚の脇腹へと伸びて、
そのまま身軽に手塚の体を持ち上げた。

宙に浮かされた手塚のまだ小さな体は勢いに任されてリョーマの肩の上へと担がれた。
途端、きゃあとかわあとか手塚の口からは驚嘆した声が発されるけれど、哀れ、そんなものはリョーマを助長させる以外の何者でも無く。

「部長、お、おおお、おろしてくださ……っ!!」
「肩に担ぐだけじゃなくて、こういうことも可能」

言うが早いかするが早いか、リョーマは肩に乗せた手塚の体をまた持ち上げて暴れる手塚をまるで気に留める様子もなく項の辺りに乗せて肩車を完成させた。首の脇から垂れる手塚の足はばたばたと暴れてリョーマの胸を踵で叩くけれど、それすらもリョーマにとっては意に介さぬ様子。
体が小さいからと担がれ、軽々と 頭上にある手塚の体を支えつつ、有頂天気味にリョーマはけらけらと笑うけれど、その様子を少し離れたところにいた乾が要らぬ口を挟んだ。

「越前。昼間から卑猥な遊びをしているな」
「ひわい?」
「手塚のはでかいか?小さいか?首の後ろにあるんだから解るんじゃないのか?」
「……っ!?」

乾を振り返っていたリョーマの体が、さっと朱が差した顔と共に傾ぐ。上半身から崩れ、ふらりと足下を揺らがせたものだから、堪らないのはその上に乗っけられていた手塚。
あっ、とも言わせぬ間に手塚の体は滑り落ち、四つん這いで項垂れ崩れたリョーマのその脇にどすんと尻餅を付いた。

痛みの走った尻を手塚が顰めた顔で擦っていれば、すぐ脇で「そういうつもりじゃなかったんです」とリョーマが小さな上擦る声で弁明した。



















ハイアーハイアー
higher higher。
75757hitありがとうございました。yukiさんへー。いつもお世話様です。
かわいい年齢逆転で、ということでしたのでこんな案配に。ちっちゃい子の後ろから大きい子がひょーいと物を取るのって可愛くないですか

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