空高く、俺は飛んでた。
ふわふわして、不安定なんだけど、すごく、気持ち良くて。
もっともっとと思って飛び続けてたら、白い大きな雲の間を通り抜けた。
青い空と赭い太陽、真白な雲。
俺の猫の様な華奢な髪を照らした。
ふと、横を見れば、雲間のパノラマより綺麗な、アンタが隣で微笑んでた。
俺は、越前リョーマ。
現在の恋人は、手塚国光、青学テニス部部長。
堪らなくこの人が好きで。
最初に告白したのも、俺で。
部長は、こういった色事に免疫がないのか、俺が見蕩れてると、気付いた俺の視線に戸惑う。
そういったとこも、なんだか可愛くって。
ますます、抜け出せなくなっちゃうんだよね。
でも、そんな部長だから、まだキスどまりな俺達。
いや、そのキスでさえ、俺には遠かった。身が堅いにも程があるよ。
初めのキスは二人きりの部活後の部室。付き合って1か月した頃。
今でも、あの時の部長の表情とか唇の柔らかさとかキスの後の溜息とか、思い出すとゾクゾクしちゃうよ。
俺は、正直、部長を抱きたい。
俺の方が背は小さいし年も下だけど、そう思わせるくらい部長が好きだ。
可愛いあの人が悪い。
でも、キスさえ1か月かかった部長だから、唆そうとしても断られる。
真っ赤になって断るあの人もいじらしくって、また俺にはたまんなくって。
ああ、なんで俺こんな部長にどっぷり浸かってんだろ。
どこがそんなに好きかって、ありすぎてわかんないよ。
でも、こうして寝た事がなくても、確実に部長を愛してるんだなって無意識の中にもビジョンが見えてる。
「ねえ、部長。
俺ね、部長と一緒に空飛んでる夢見たッスよ。
空でデートしてたのかな。
背中からね、白い羽根が生えてて空を二人で駆け回ってんの
・・・・・・・・・
部長、まだ急がなくっていいから。
俺のほうが急いじゃいそうだけど、待ってるから、
俺と、一緒に生きてくこと、必ず、選んでほしいんだ。
他の誰でもない、俺と。
俺と、だけ。
ね、約束してくれる?」
俺の名前は手塚国光。
初めてできた恋人は、2つ下のテニス部の後輩の越前リョーマ。
越前から告白されたのはもう2か月前。
初めこそ越前を意識してなかったが、あいつを知る度に惹かれてる俺がいて、越前の告白を受けたのはあいつが告白してから2週間後。
キスをしたのはそれから1か月後。今から1か月前。
凄く、照れたのを今でも覚えている。
でも、もっとそうしていたいと思ったのも事実。
俺の中の気持ちに気付いてからも、あいつにはまだ言っていない。
きっと、どれだけ季節が過ぎても変わらないと誓えるぐらいのこの恋心を。
言ってしまえば、俺があいつにひきずられるか、
それとも、あいつが俺に引きずられてしまうんじゃないかと思うからだ。
つまり、二人の幸せの為にはならないだろうと、感じているからだ。
お互いに惹かれあったのは、相手に引きずられていない、確固たる俺達自身なのだから。
夢の中の本当の話。
空を飛んでいた。
眼下には瑞々しい緑の木々、遥か遠くの碧い水平線、人々の呼吸のする町並み。
その光景にしばし見蕩れた後、何気なく上方を見遣ると、白い雲のパノラマ。
そして、気が付くと隣で微笑んでいてくれる、越前。
ねえ、部長
なあ、越前
俺、ほんとにアンタが好きだから、他の奴なんて見られないよ。
いくら巡る季節もお前と一緒に過ごしたいから、周りなんて見ていられない。
だからさ、アンタに誓うから、俺の夢に出てきたみたいに、他の奴の夢になんて出ないでよ?
俺も、こう思っているから、お前も俺の夢にだけ出てこい。
空の彼方で密かにデート。
アンタと一緒に飛んでた。
お前と共に飛んでいた。
背中から生えた白い翼で。
空のどこまででもデート。
運命っていきなりくると思ってたけど、
運命って突然くるものなのかと思っていたが
そよ風みたいな、こんな出会いもある。