ラスト・ラストシーン
一応、エロ注意
「もうすぐじゃない?」
「ま……っだ、もう…少し、奥……」
「大体の人間はここにあるんだけどね」
言うと、リョーマは手塚に突き挿れた人差し指をくいと曲げた。
常人ならばそこにある筈のものが予想通りに無くて、困った様な溜息を落とすと共にリョーマは指先が触れるその内側部分をぐいと押した。
ともすれば、呻く様にも似た声が手塚の口から零れ落ちる。
「もう少し奥、って、」
これくらい?と尚も問いを重ね乍らリョーマは曲げていた指を戻し、指の付け根いっぱいまで内壁を擦り上げ乍ら奥へと捩じ込んだ。
釣られたてで酸欠を催す川魚みたいにひくひくと手塚は脇腹を引き攣らせるけれど、それはリョーマが望むべき反応では無い。
焦燥の汗がリョーマの輪郭をなぞって落ちた。
「まだ奥なの?」
もう人差し指の長さではこれが上限なのだけれど。
リョーマの声に潜む落胆や焦りの気持ちは、自分のことで精一杯の手塚には汲むことが叶わなかった。
こんな状況下でリョーマと会話を出来ているだけでも、個人的には物凄い頑張りだった。
「まだ奥…らしい、な」
「見つけるまでイッちゃわないでよ?オレだって我慢してるんだから」
ふと気を緩めれば今すぐにだって足下を汚してしまいそう。
手塚が会話できていることを尽力の極みだと思うのならば、リョーマは声を途切れさせたり上擦らせたりせずにいられることを褒めて欲しいくらいの努力の賜物だと思う。
正直、さっさと射精してしまいたい。
そんな本音も嘆息も、くっと飲み込んでリョーマは今にも緩みそうな下肢に力を込めた。
体の各所にかけるバランスは的確に。目標に敢え無く届かなかった人差し指を引き抜く時も指にばかり注意がいかないように。
自分とは違う人間の体温をくっ付けた人差し指を細心の注意で抜き出すことを全うさせれば、眼下の手塚が重苦しそうに息を吐いた。リョーマにもどっと疲労感が押し寄せる。
どうしてたかが性感帯ひとつ探すだけでこんなに疲れているのかと思うと少々滑稽に思えてくる。
「…ねえ、もうフツーにやんない?」
「言い出したのはお前だろうが…」
「そうだけど……疲れた」
「俺だって疲れた」
一人はシーツの上で大股を開き乍ら。もう一人はその足の間に座り込み乍ら。
何やってるんだろう、とほぼ同時に痛感した。
「第一、触るだけで解るものなのか?」
「そこ以外の場所と違って、ちょっとザラっとしてるから解るよ。触った途端にアンタの体の方も反応示すだろうし」
ふと、リョーマは自分の手に視線を落とした。人差し指の限界を持ってしても届かないのならば――
「中指?……でもあんまり差は無さそうだよねえ……」
「お前はまだ手が小さいしな…」
「一言多いよ」
「…悪態のひとつでも吐きたくなる」
ううん、と唸って手塚は寝返りをひとつ打った。
火照らされるだけ火照らされた彼の顔は当然に赤い。
「越前、塵紙」
「…何すんの」
瞼を伏せて気怠げに言う彼の横顔にじわりと嫌な予感。
「もう限界にも程がある」
「先に出しちゃう気!?」
「お前の指では届かんのだろう?」
「指以外にも長細いのあるっつーの!」
リョーマの言葉に手塚は少し沈黙し、薄目を開けてリョーマの方を一瞥した。主に下半分を。
「…届くかどうか」
「セクハラっ」
「いつものただ突っ込んで揺すればいいというものとは訳が違うんだろうが」
長さが問題だ、長さが。と念押しする様な手塚の台詞は余りに無遠慮というもの。
けれど、リョーマもこの場面でただ拗ねたりごねたりしても事態が打破されるものではないことくらいは理解できている。
理解できてはいるが、苛立ちを感じないのとはまたその思いはまた別のもので。つい口先が尖った。
「そりゃオレは部長と違って成長途中ですから?将来が有望な分、今は発展途上なわけだし?」
「…誰も小さいとは言ってない」
ただ、二人が探す一点にはどうにも長さがもう少し足りないだろうというだけで。
リョーマにすればそんなもの、ほぼ同義としか受け止められないのだけれど。
「取り敢えず、この状況を一旦膠着させてくれ」
さっき言ったものを寄越せ、とばかり、手塚はリョーマへと手を差し出す。が、その伸ばされた腕は無情にもリョーマに握られるだけに終わった。
臨界点ぎりぎりな余裕の無さが手塚に苛立ちを齎す。
「越前」
「や・だ」
「やだじゃなくて」
「イヤなものはイー ヤッ」
握った指にぎりぎりと力を込めて強く反発するリョーマに、手塚は困り果てたらしく肩を竦めた。
「じゃあ、いい」
リョーマには片手を預けたまま、手塚はもう一方の手で肥大した性器の先を握り込んで直ぐに張りつめていた緊張を解いた。
熱が外に吐き出される感覚で、身体がぶるりと震える。
それはリョーマが止めに入る間も無い、数秒にも足りないうちで。
白い吐瀉物で塗れた己の手を、弾む息を零し乍ら一度眺め、それからそちらの手をリョーマへと差し向けた。今度の要求は飲ませるだけの理由が掌にある。
「今度こそ寄越せ」
「………」
「…越前?」
差し出した手に視線を落としてはいるもののどこか呆けている様な双眸。一方の手を掴んだままであるもその手には先程の力はごそりと抜け落ちていて。
そんなにワンマンぶりがショックだったのだろうかと手塚は肝を冷やす。てっきり怒髪天を突く勢いで憤るものかと予想していたものだけにギャップは激しくて。
そして御機嫌伺いめいてリョーマを呼ぶ。
けれど、彼は放心した様子から覚醒の気配を見せるまで随分と時間を要した。
そして覚醒一番に、彼の口からは矢張り怒声が飛んだのだ。
「オナニーのラストシーンみたいだったんですけど!」
怒声、というには、彼は少々色めき立ち過ぎていた。
ラスト・ラストシーン
何度も何度も繰り返すことを、お笑い用語で天丼と申します。
Gスポ探しネタ、これで3回目くらいじゃなかろうか。
天丼天丼天丼。
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