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ミラクル・ブロック







「あ…!」


夕焼け小焼けの帰り道。
並んで歩く。

幸せな時間なはずなのに。
西日をさえぎる物の無いこの道を歩くのだけはリョーマは実はちょっとだけ嫌いだった。
いつも身長差が、気に入らなくてならないのに。
この道は自分達の背後から太陽がさすから影がきちんと見える。
長く長く伸びる影が、二人を大人と子供の様に見せるのだ。


そんなリョーマの前に、まるで天の恵みのように現れたもの。
あっけに取られる手塚の前を、軽いステップで走って、リョーマは沿道にいつの間にやら設置されたブロック塀へと登る。
その高さはほんの30センチほど。
おそらく単なる車避けだろう。
しかし、この微妙な高さがリョーマには都合が良かった。

「…危ないから、やめないか」

溜息をついて手塚が言うと、リョーマはニヤリと笑う。

「ねぇ、この道はオレ、こうやって歩く」

そう言ってリョーマは沿道のブロックの上を歩く。
両手を広げて、バランスを取りながら危な気なく。

「こら…。危ないと言っているだろう」

一度言っても止めないリョーマに、やっぱり手塚は同じ事を言う。
細いブロックの上を大きなテニスバックを担いで歩くのだから、バランスを崩せば足でも挫きかねない。
しかし、フットワークには絶大な自信を持つルーキーは頷かない。
こんな事で故障してもらっては、部長としても大変困るのだが…。

小さなコンクリートのブロックに登ると、その高さの分手塚よりも少し頭が高くなる。
肩が、ほんの少し、リョーマの方が高い。
まさに、理想の身長。
リョーマの夢、だったりする。
夢のままで終わらせる気は毛頭ないけれど。


「ヤダ。いいじゃん、あとちょっとでしょ」


お気に入りのおもちゃを見つけた子供のように。
リョーマの目が嬉しそうにこちらを見下ろしてる。
なるほど、この子供のやりたいことは飲み込めたが…。

「落ちてもしらんぞ」

「絶対落ちないよ」

そういってアーモンド型の目を吊り上げる。
まるで子供。本当に子供。

溜息をついて。

しょうがない…気をつけていてやるか…。

と思っている自分が一番性質が悪いのを手塚自身は先刻承知だ。




沿道にブロックがある区画が終わるまであと1メートルちょっと。
その地点でリョーマが足をピタリと止めた。

「…?どうした?」

「オレのこと、子供だと思ってるでしょ?」

「…思わないと思うか?」

呆れた口調で返せば、口を尖らせて拗ねるリョーマの顔が目の前にあって。
そうか、視点が変わるとはこういう事かと思った。
それが、隙になった。

チュッ。

額に触れた柔らかい感触に、目を瞠る。

チュッ。

そんな、手塚の右頬に。

チュッ。

そして、唇に。
すばやく落ちる、バードキス。

「な…!!」

ここは天下の公道で。
手塚は真っ赤になってリョーマから飛ぶように離れた。

「ほんっと、この身長なら部長隙だらけなんだよね。早くデカくなりたいよ」

ブロックからぴょん、と飛び降りて。
ニヤリ、と笑ったリョーマはもちろん無邪気な子供などではなく、小悪魔のような目をしていた。
…と手塚は思った。

「馬鹿者!!場所を考えんか!!」

リョーマの頭に鉄拳を沈めながら思う。
自分もうかうかしてられない。
毎日牛乳を飲んでみようか…?と。
少し真面目に考えた。


その案は涙目で頼むリョーマによって却下されたのだけれど…―。











町田あきこさんから頂戴しました、ミラクル・ブロックでした。
一足早い誕生日プレゼントとして頂いてしまいました!
うわーん、生きてて良かった!ママン、生んでくれてありがとう!!万歳三唱!
隙だらけの手塚とちゅっちゅかしまくるリョマさんにただ、もう、バタバタしております。
っていうか、モエポイントはあれですね、ブロックの上でバランス取り乍ら歩く越前さんですかね!
きっと、こう、両手広げてテレテレ歩いてるんですよ、この子は!
ッヒ!たまらん!
ああ、少し落ち着こう。………むりっ!(早)
こんないいもの貰って落ち着けという方が無理です。ええ。(きぱっ)
町田さん、本当に本当にありがとうございました!!!!!!!

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