狙うはアンタ。
手に入れたいのはアンタ。
そう、アンタ、ただ一人。
ターゲット
狙うは、アンタ。
だけど、わかってたつもりだけど、こうまで難攻不落な上に敵ばかりだとは思ってなかったよ。
部長にキレて告白した翌日。
昨日の晩は、どうしてああいう風に告白してしまったのか少し後悔した。
もっと、一発で落とせるような言い回しにするつもりだったのに。
まあ、後悔したってしょうがないから、ここから攻めていくしかないかな。
そう思いながら昼休みの図書館当番を眠気半分でする。
昼飯も食べて、日が暖かく照るこんな陽気じゃ寝るなっていう方が、ムリ。
図書館の利用者は多いんだか、少ないんだかわからない。
覗いた窓から見たグランドで遊んでる人の方が多そうだったかな。
俺もここでこんなことしてるより、部長でも誘ってコートで遊びたいよ。
昼休みも半分くらい過ぎた頃、意外な人が図書館の扉を開けた。
「あれ?越前?」
「・・・不二先輩」
あまり、不二先輩は図書館で見かけない。
まあ、俺もそんなに使ってる方じゃないから、俺以外の誰かが当番の時なんかには来てるのかもしれない。
「・・・うっす」
「ふふっ、今日は当番なの?」
相変わらず、読めない笑顔の仮面。
「そうっす。不二先輩は何か借りに?」
「ううん、逆。返しに来たんだ。手塚のおつかいでね」
「部長の?」
手塚、という言葉に俺は耳聡く反応する。
「不二先輩が部長のパシリ?」
「うーん、そういうんじゃなくてね、前に授業の借り物したからそのお返しに何かするって言ったら、これ返して来てくれって」
そう言いながら俺の目の前に、俺の読まない様な小難しいタイトルの本を晒した。
難しそうっすね、と返すと、でしょ?と仮面は笑う。
「僕としてはもっと大胆なお願いが良かったんだけどね」
・・・大胆な?
俺が意味が分からない、という顔をしてたのか、不二先輩はまた微笑むと、
「例えば、添い寝してくれ、とかね」
と宣った。
「なっ!」
柄にもなく、俺は慌てた。
添い寝って、添い寝って・・・
まさか、この人も
「そうだよ、手塚狙い」
「…俺の顔に言いたい事、書いてました?」
「うん。越前って意外とわかりやすいんだね。…越前、『君も』だよね?」
……。
どう、答えたもんかな。
どうせ、いつかはバレると思ってたけど、まさかもうバレてるとは思ってなかったよ。
まあ、でもバレてたんなら、隠す必要もないよね。
「そうっすよ」
「ふふ、ついでに、昨日告白したでしょ、手塚に」
なんでアンタがそこまで知ってんの。
驚いた、っていうより、呆れた顔してるだろうな。今の俺。
昨日、あの場所には俺と部長だけだと思ってたんだけど、どこかに居たのかな。
それとも、部長から聞いたんだろうか。
「ちなみに手塚から聞いたんじゃないよ」
・・・アンタは読心術でも心得てんの?。
それとも、そんなに分かりやすい顔してんのかな、俺は。
「聞いたのは乾から。昨日、見てたのは乾だよ。それを今日聞いたの」
「乾先輩、居たの、あそこに」
少し納得した。
乾先輩は時々、どこで知ったのかっていうデータまで手に入れてるから。
しかし、見られてたなんて・・・。やっぱり、もっとセンスよく告白すれば良かったよ。
「まあ、乾の事だから君たちにはバレないように見てたとは思うけど」
「気付きませんでしたよ。見られてたなんて」
ホントに。まだまだだね、俺も。
「乾先輩、他の人にも話したんすかね?」
不二先輩に話したってことは、他の3年の部員にも知られてるかもしれない。
どこまで広まってるのかは興味があった。
「そうだね、英二と大石、それと2年の海堂とか荒井にも伝わってる筈だよ。ああ、それと越前は知らないだろうけどOBの大和先輩とか氷帝の跡部とか忍足もかな。あ、女テニの3年の半分くらいも、か。他にも何人か乾が知らないところでも広がってると思うけど」
「・・・なんで、そんなに多いんスか」
呆れた。
乾先輩って誰彼構わず話してんのかな。
まさか。あの人が自分のデータを何の利益も無い人に話すとは思えないんだけど。
俺が色々考えてると、また、仮面は微笑んだ。
「なんでって、僕達、徒党組んでるから」
「徒党?」
何、それ。
っていうか、何の。
・・・嫌な予感がするんだけど。
「そう、徒党。『手塚を押し倒し隊』。このネーミングってどう思う?乾が付けたんだけどさ」
「は?」
つまりは・・・
「ふふっ。そう、君の敵は結構多いと思うよ。ま、精々頑張ってね」
そう言うと、俺の座ってる図書館受付のカウンターの上に部長からのパシらされた本を置いて、笑顔で不二先輩は元来た扉を開ける。
と、ドアの少し先にこちらに歩いてくる部長がいた。
「あれ?手塚?どうしたの?」
不二先輩が部長に近付く。
「ああ、もう1冊あったのを忘れていてな。返却期限が今日だから、自分で返しにきた」
「そんなの、言ってくれたら放課後にでも返しに行ったのに」
ついでに何か借りようと思ってな。
言いながら部長が中に入ってくる。
部長をマジマジと見つめていた俺と部長の視線がぶつかる。
「…越前」
「部長…」
明らかに昨日の事、意識してる。
でも、
…抱きつきたい。
…寧ろ、泣きつきたい。
この現状を思いしってしまったから。
勿論、負けない気はあるし、この人は絶対手にいれるけど、それでも、予感させるあまりの前途多難さに気が滅入る。
「…そういえば、不二、菊丸が探していたぞ」
部長が不二先輩を振り返る。
「英二が?」
「例の会議、とか言っていたが。何の事だ?」
「え?んーとね…ふふ、やっぱり秘密。兎に角、知らせてくれてありがと、手塚」
じゃ、と手を挙げて不二先輩が廊下を駆けていく。
部長と二人になる俺へ睨みを一瞬効かせて。
…あの人が一番の敵かな。
敵の足音が遠ざかっていく。
扉から部長に視線をやると、カウンターに本を置きながら、何か言いためらってる。
「部長」
何となく、言いたいことは分かるから俺から切り出す。
どうせ、昨日のことでしょ。
「昨日の、ジョークとかそんなんじゃないからね」
「・・・っ」
図星、ってとこ?
部長が視線を俺から背ける。
「ねえ、部長」
逸らされてた視線が返ってくる。
そんな部長の耳元にカウンター内の椅子から上背を伸ばして囁く。
部長も察したのか、少し前に傾いてくれる。
「本気で、アンタが好きなんだよ。アンタだけだよ」
「・・・越前」
困った様な顔してる。・・・いや、困ってんだろうな。
「答えは今すぐじゃなくていいよ。ちゃんと、考えて欲しいから、俺との事」
適当になんて考えて欲しくない。
この人のことだから流されて付き合う、なんてしないと思うけど。
ちゃんと俺を意識して、俺の気持ちをちゃんと理解した上で、俺を好きになって欲しい。
部長が大きく溜息をつく。
「何?部長ってこういうのに差別ある人?」
「差別はないが…抵抗は、少し、ある」
ふうん。
少し、なら大丈夫なんじゃない?
俺に溺れさせてやるよ。
「俺、負けないから、あの人達なんかに」
そう、絶対、アンタを手に入れてみせるよ。
この気持ちは、確実に誰にも負けない自信がある。
部長は、誰の事を指してるのかわからなかったみたいで、小首を傾げてる。
そんな仕草さえ、俺には胸に来て、少し笑った。
部長も連られる様に苦笑した。
狙うはアンタ。
俺のターゲットはアンタだけ。
誰にも負けやしない。捕まえさせたりしない。
そう、誰にも。
2作目、ターゲット。
いや、あの、別に手塚総受け派ではないです。
書きながら、できるだけ敵は多く見せておこう、と思って、ですね。(しどろもどろ
でも、自然にリョマの敵は減ります。
大石と菊丸はヲトコ的に手塚が好きなんじゃなくてですね、なんか、手塚がぼけっとしてるから(黄金ペア視点)変な男、もしくは女が付かないように見張ってるというかですね。
あと、海堂はそのうち乾とくっつくです。
今は、設定上、リョマが部活入ってすぐなので、お互い目覚めてないだけなんです。ええ、そう。
でも、海堂→手塚という構図は大好きなんです。
しかし、この時期設定でやるにはリョマが乾のデータマン性質を見抜いてて、矛盾してるんですが。
ああっ、もうこれだからSS初心者は!!精進!