揺れる
「オレ、部長が好きです」
越前に告白されたあの日から、俺の中に越前が入ってきた。
今まで、人を好きになったことがない訳ではない。
告白された事も、実は何度かある。
けれど、今までは全て断ってきた。
それは……何でなんだろう。
そして、何故、越前の告白にだけ、こんなに敏感になっているのだろうか
リョーマに告白されてから、毎晩、手塚は自問自答を繰り返す。
あの日から、前に比べて越前と視線が合う回数が多くなった。
…それは、俺が越前に視線を投げる回数が増えたからだろうか。
何を、意識してるんだ、俺は。今年15にもなるというのに。
「本気でアンタが好きなんだよ。アンタだけだよ」
そうも越前に言われた。
俺だけだと、あいつは繰り返した。
俺だけを想っていると、本当に本当なのか…?
そう、今まで告白された女生徒達は、越前の様に本当に俺だけを想ってくれていたのだろうか。
……。
いや、そうではなかったのだろう。
現に、彼女らは今、別の男と付き合っていると噂で聞いた。
あの時は、確かに俺を好きでいてくれたのかもしれないが、その想いはずっと続くものではなかったようだ。
越前は、越前はどうなのだろうか。
俺が、仮に断ったら、その時点で諦めて冷めてしまうのだろうか。
「越前」
「なに?部長」
部活終わりの夕暮れ時、部室にはリョーマと手塚の二人しか残っていない。
あの日から、リョーマは手塚が日課の部誌を書き終わるまで部室に留まるようになっていた。
手塚が部誌を書いている間は、取り留めて何をする訳ではなく、ただ机に片頬を寄せて手塚の手元を眺めていた。
そしていつも正門前まで手塚の後を追いかけるように一緒に帰った。
部誌は丁度、本日の練習内容を半分まで書かれていた。
そこまで書いて、ふと手を止めると手塚はリョーマに話しかけた。
「お前は俺が好きだと言ったが…」
リョーマがそれを告げたのはもう1週間も前だったが。
「うん、言ったね。それがどうしたの?」
リョーマは手塚に対して時々しか敬語を使わない。
手塚のみならず、どの年長者に対しても時としてしか敬語で話さない。
それは恐らく、幼少時から年上を敬う様な儒教的な考え方が根付いていない米国に於いて生活して会得したものだろう。
リョーマ周辺の年長者もこの実力の底が不定な後輩が敬語を使わない事を不快に思う事もなかった。
それは敬語を嫌う現代の若者の風潮もあったのかもしれないが。
「もし、俺が断ったらどうする?」
「…断るつもりなの?」
リョーマが机にぴったりと押し付けていた片頬を放して手塚と相対する。
真っ直ぐに見詰めてくる後輩から、反射的に手塚は視線を逸らす。
「仮に、という話だ。断ったらその時点で諦めるのか?」
そう言った手塚の言葉にリョーマが目を見張る。
図星でも当てたかと、そう手塚は思った。
やはり、この少年も自分の周りの少女達と一緒だったのだ、と。
「…何言ってんの、アンタ。そんな軽い男に見えるの?オレが」
手塚がいつもそうしているように、リョーマの眉間に皺が寄る。
「たとえ、今アンタが俺の告白を断っても、オレは追い続けるよ。振り向くまで追いかける。その足は絶対に止めない」
何故、そこまで俺に固執するのかと、手塚は思った。そしてそれが口を突いてて気付けば出ていた。
何でかって?とリョーマはいつもの不敵な顔に戻った。
「何でかって言えば、俺も実はよくわからないんだけど、直感っていうか、本能っていうかね、それがオレにはアンタだって言ってるんだよ。理由は、それだけ
本当に惚れた部分は後から気付くかもしれないけど。
それに、アンタを振り向かせる自信がオレにはあるからね」
そこで、リョーマは目を細めて笑う。
手塚は、揺れた。
「アンタは――」
リョーマが手塚の手首を掴む。
「アンタは、どうなの?オレのこと、どう思ってんの」
「俺は――」
手塚は云い澱んだ。
視線が彷徨った。
彷徨った視線と意識を矯正するかの様に一度、深く瞼を合わせる。
そんな手塚の瞼が上がるまで、リョーマは彼の顔を見ながら辛抱強く待った。
「俺は…」
手塚の瞳が薄く覗く。
「俺は、まだ、判らない。正直」
申し訳なさそうな顔でリョーマに手塚は向き合う。
そんな手塚と相対的に小さなルーキーは花開くように笑う。
「構わないよ。言ったでしょ、返事は後でいいって。でも、結果がどうでも、必ず言ってよね?」
「勿論だ。そんないい加減な男に見えるか?俺が」
そこでお互いに苦笑した。
俺は、まだ揺れている。
でも、もうすぐこの揺れは止まる。
俺の中の何かがそう告げていた。
揺れる。
手塚サイドからです、一応。
す、少しウジウジしてますかね、手塚。
ああ、もっと、こう、漢らしく生きて…!!ヒィ
あーっていうか、ここ最近書いたものと、会話部分が酷似してて、そろそろネタが尽きて来た模様。
もうそろそろ手塚に返事させないといかんですな。精進!