枯渇
















理性なんて、枯れ切っていた。
いつもは干上がる直前に気が付いてそっと水を足しておくのに。



「今すぐにでも…って。…マジ?」

触れられた頬すら俄には信じられなくて、リョーマはそこにそっと自分の掌を当てた。
確かに触れられた感触がまだある。
それは掌を当てて感じられるものではなく、自分の膚を通じて判った。

「…参ったな…」
「やはり、困るか?」

困った様に笑うリョーマが前髪の隙間から見えて、我侭過ぎたか、と手塚は思った。
けれど、手塚の内心の落胆とは裏腹にリョーマは小さくかぶり振って、手塚の背に回した腕に力を込めた。

「そうじゃなくて。我慢、きかなさそうだなって思って…、『参ったな』」

他人に求められることにはついこの間までは当たり前で、何とも思ってなどいなかったのに。
どうしてこの人に求められるとこんなにも強烈な高揚感に襲われるのか。

手塚の胸に額を埋めながら、リョーマは自分の熱が上昇し始めたことを自覚した。

「我慢なんて、お前とは一番無縁だろうに」

リョーマの頭上で手塚がくつりと笑う気配。

「いつもいつも我侭で、傍若無人なお前だろうに」
「そこまで言う?」
「我慢という言葉をお前が知ってることが驚きだ」

くつりくつりと。細い笑いは止まない。
先刻までの様子はどこへ行ったのかと、リョーマは内心で肩を竦めた。

そんな刹那、リョーマの頬にまた手塚が触れる。

「嫌か?」

視線だけで見上げれば妖しく艶やかで、自分で無くとも虜になるであろう笑みをしている恋人の顔があって。
ここまで膳を据えられて、平らげない馬鹿な男がいるだろうか。
もし居るとしたら是非ともお目にかかってみたいものだとリョーマは思う。

「その笑い方、他の奴の前でしないでよ?…それにしても、今すぐ…とは言っても…」

そこでリョーマは一度手塚の身に絡めていた腕を解いて、辺りをきょろきょろと見渡した。

二人が立つこの場は民家が少しばかり先に立ち並ぶ一本道。
手塚側の脇には何かの店舗の裏らしき建物の壁。小窓が一つ。道との間には鉄製の格子の柵。
そしてリョーマ側には、雑草がリョーマの膝よりも高くまで伸び切った空き地。
手前に不動産屋からの注意書きの立ち看板。

本当に膳の用意がいい、とリョーマは思う。

目の前には求めてくる手塚。背後には、こちらでどうぞと言わんばかりの空き地。
カーテン代わりに身を隠せるだろう枯れかけの草の群れ。

「ここ、でいいよね?」

にこりと笑って、リョーマはその空き地を指差し乍ら手塚を振り返った。














手塚の身を緩々と倒せば、草をその身で掻き分ける小さな音がする。

「ホントに今のオレ、我慢きかないけどいいよね?」

手塚の脚を膝立ちで跨ぎ、リョーマは自らのシャツの釦を外しながら手塚に問うた。
最終確認、というやつだろうか。
勿論、ここで嫌だと言われても止まることなど不可能に思えたが。

そして当然、

「構わない」

熱に浮かされ始めた彼が否と答える訳も無くて。

「部長、顔、ちょっと赤い」

一番下まで釦を外して、完全に両断されたシャツのリョーマの膚が覗く。
ぞわり、と言葉では言い得ぬ何かをそれを見上げる手塚の背中に走る。

「わざわざ指摘しなくていい」
「そう?可愛いからついつい言いたくなるじゃん。部長、これ下に敷いて」

そう言って手塚の背に腕を回して手塚を微かばかり浮かせて、リョーマは腕を抜いたシャツをその下に潜らせた。

「部長のシャツ汚れちゃうし」
「だが…これではお前のシャツが今度は汚れるだろう?」

いいのか?と手塚は瞳で問う。

「いいの。オレのが汚れてても家族はあんま気にしないし。オレってまだ遊び盛りだと思われてるから。でも、部長んとこはそうはいかないじゃない?」

確かに、普段は汚れ一つつけて帰らぬ自分のシャツが汚れていれば、最低限、母から何かを問われるかもしれない。
真実は到底自分の口からなど答えられないし、下手な嘘なんてあの母に通用しないことは手塚自身が一番よく判っている。

「それもそうだな」
「でしょ?ね、キスしていい?」
「わざわざ、聞くか?」

くすりと手塚は笑った。
こいつもこいつなりに緊張しているのだろうか、と思えて。
自分よりもそういえば二つも年が下だったことを今更に思い出して。

身を屈ませて来たリョーマの首に腕を回して、手塚は瞳を閉じた。









理性は、既に枯渇していた。
いつも渇く徴候すらみせないほど潤されているのに。






















枯渇。
石を、投げないで、くだ、さ、い。(怖々)
12500hitの折に書かせて頂いた、
凶氣で、野外プレイへの序曲と書きましたら、是非続きをvとの暖かいお言葉を頂き(笑)よっしゃ、野外書きますか!!と意気込むだけ意気込んで書いて、みたら、やる前で十分一個のオオザキテキストになってしまったというかここからやり終わりまで書くとすっげ長くなんじゃねえの!?と、ここで、取りあえず、一度、切って、みまし、た…。(震
ええ、この続きもね、書くつもりなんですよ。

いつか(殴

や、近いうちに…!
完結エロを…!2004年の目標は完結エロを最低でも2本は…。書けたら、いい、な。なんて。
ちなみに、冒頭はリョマさんで、文末は手塚さんです。
激しく中途(色んな意味で)で申し訳ないっす。
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