a next story
「ふーん。そういう訳で最近の手塚は始終赤面しっ放しって訳?大石」
「そうみたいだよ、不二」
リョーマの想いが手塚に通じてから3日。
二人の事の成り行きを大石を伝って聞いた不二は、呆れた様に机に頬杖を付いた。
「越前が手塚に送ってるあつうーい視線のせいで部活中ずーっと慌てた様子だなんて、他の部員が知ったらなんてどう思うだろうね」
「まあ、そこは、ね。今は秘密にしといてやってよ。どうせ、すぐに公然の秘密になりそうだから、さ…」
何しろ、周りの目など気にしない越前リョーマに、喩え周囲が気が付いたとしても囃し立てることも事実に突っ込む者など部活内に存在しない手塚国光、というカップルだ。
たとえばれても、誰もその話題については大っぴらに語りはしないだろう。
「でも、まさかオチビが手塚を好きだったなんてにゃー!びっくり!」
「エージ、食べるか喋るかどっちかにしたら?」
今は午前の授業も終えた昼休みの最中。
菊丸と不二のいる3ー6に大石は共に昼食を摂るべくやって来たのだ。
いつもは手塚と食べている大石が自分達と食べるというのは珍しい、と思った不二がその訳を問い質したところ、件を大石が漏らした。
「わかりましたよー!俺は今は食べる!だから、二人で喋っといてよ」
頬を膨らませて怒ってみせた後、菊丸はただ只管に自分の昼食と向かい合った。
そんな菊丸にも呆れた様子で苦笑を不二は向けた後、大石に向き直った。
「で。今、手塚と越前は一緒に御飯を食べてて、それで大石が此所に来たって訳なんだね」
「まあね。飯は一人より多い方が美味いだろ?多分、不二もいるだろうなって思ってさ」
迷惑だったかな?
そう眉尻を下げた大石に不二はいつも笑んでいるその眸を更ににこり、と細めた。
「構わないよ。
でも、エージも言ってたけど、なんで越前は手塚を好きになったんだろうね。普通、あんな仏頂面のやつなんて好きにならないと思うんだけど、な」
仏頂面。
良く言えば、寡黙でクール。
不二にはその仏頂面の裏に潜んでいる可愛らしさと言うものを知っている。
この3年という長い月日の中で漸く掴んだ、手塚国光という人間だ。
リョーマは部活に入ってまだ浅い。
手塚をよく見知らぬ人は、あの無表情に畏怖すら抱くだろう。
だと言うのに、リョーマは手塚を好きになったという。
「なんでなんだろうね」
「あー…越前に聞いた事があるんだけどね。何でも、手塚が可愛かったから、だとか」
「手塚が?可愛い?」
本当にそれをリョーマが言っていたのか、大石に再度問い直し間違いないことを確かめた不二がふう、と溜息を吐いた。
「まさか、僕のあの時の一言が原因だったのかな…だとしたら、とんでもない墓穴を堀ったもんだな…」
3人が昼食を摂っている席の傍にある窓から空を見上げ、ぽつり、と不二は呟いた。
「え?不二、なんて?」
「何でも無いよ、独り言」
こちらにいつもの笑顔のままで不二が振り返る。
時をほぼ同じくして、菊丸が両手を合わせて、ごちそーさまデシタ!と叫ぶ。
「お粗末様、エージ」
「ねえ、さっきから気になってるんだけど、あそこのさ、屋上のとこの影、ひょっとしてオチビ達じゃない?」
不二が先程視線を投げていた窓から見える屋上の端を菊丸は指差した。
そこには、随分と体格の違う二人組の影が見える。
小さな影が大きな影へ一方的に寄りかかっている。
「あ、ホントだ。多分、手塚達だね」
「随分と仲良さそうだにゃー。ね?不二。……不二?」
手塚達から視線を外し、自分の斜め前に視線を向け直すが、そこには居る筈の級友の姿はない。
ただ、其処には乱暴なばかりに後ろへ引かれた椅子が一脚あるだけだ。
「…あー、ひょっとして、不二ってば…」
「お邪魔に行った、のかな?あそこの二人の」
「多分、きっとそお…」
渋面の菊丸と苦笑の大石の向こうの屋上の影がもう一人分加わったのは二人が視線をそこから外した、まさにその刹那だったという。
「越前、抜け駆けは許さないよ?」
a next story。
まあ、大団円にて、幕引きでございます。
恋敵の出現でリョーマにとってはちっとも大団円なんかじゃないんでしょうが。
それにしても、あの、15日間もどうもお付き合い有り難う御座いました!
開催中は何度も感想のご意見をメールに掲示板にと頂けて、書き上げられたのは偏に皆様のおかげです。
大大大感謝!ですダーン(マイブーム)
これから暫くは普通の更新になりますが、そちらも楽しんで頂ければ幸いです。
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