囚われの王子達
















「Yes」


穏やかな南風が二人の間を抜ける。
僅かな隙間しかないリョーマと手塚の間を。

「…Thank you」
「You're welcome」

そこで二人視線を合わせて、くすり、と微笑み合う。
絡ませ合った指に力が入った。

「I have loved you. You love.」
「……判ったから…その…」
「What?」

一つこほんと咳をついた手塚にリョーマは不思議そうな目を向けた。
頭上の彼の貌は紅潮していて、視線はこちらを向いていない。

「How it did?」

言葉を続けようとしない手塚を更に不思議そうにリョーマは見詰める。

「判ったから、あまり繰り返すな。照れくさい」
「!?」

ついつい、リョーマは可笑しさから噴き出してしまう。
そんなリョーマを窘める様に手塚の眸がこちらに向く。

「笑うな」
「Even, you. Don't you think? it is lovely. ……Truly I love you.」
「〜〜…っ!可愛いとか言うな。馬鹿者」

そんな手塚の反応に遂にリョーマは声を立てて笑ってしまう。
自分よりも年上で背も高く、普段は威厳に満ち溢れているというのに。
照れからこんなに赤面している手塚を見られるのは自分だけだと思うと、正直嬉しい。
自分だけのこの人なのだと思うと、笑いに拍車がかかる。

「あー、笑った笑った。アンタってホントに素敵すぎだよ」

精いっぱいに背を伸ばしてやっと届いた彼の顎のラインに唇を落としてやる。
その瞬間に手塚は繋いでいない手で慌ててリョーマの肩を押しやった。

「……なに、なんなの、この手は」

押されて、距離を作られたリョーマは伸ばしていた背を元に戻して不満そうに頬を膨らませる。

「オレ達、あの日キスまでした仲だっていうのに。何?この手は」
「あれは……っ!お前が勝手に嗾けて来たんだろうに」
「抵抗しなかったじゃん」
「驚き過ぎてたんだ」
「そんなの、言い訳になるとでも思ってんの!?」

作られた距離を強引に詰め寄って、リョーマは手塚の首に片腕を回して飛びついた。
飛びつかれた反動で手塚は前傾の姿勢になってしまう。
そして手塚の気が飛びついた腕に向かっている隙にリョーマは手塚の唇を一瞬だけ攫う。

「ゴチソウサマ」
「……頼むから、少しは俺の速度に合わせてくれ」

にやりと笑うリョーマに対し、手塚はほとほと困った様子で項垂れた。
やっと、好きだと言う覚悟が出来て、受け止められる覚悟が出来たばかりの手塚にリョーマの速度は些か早過ぎる。

脈が心臓に追いつかずに弾け飛んでしまいそうだ。

「うーん、まあ、どきどきし過ぎて死なれても困るし、ね。多少手加減はしてあげるよ」

それでいいでしょ?
にこり、と無邪気に笑ってみせるリョーマが手塚に対し余裕の表情に見える。

「フン、そう言っていられるのも今のうちだ」
「へ?どういう意味さ」







「すぐに俺無しでは生きて行けない様な躯にしてやる」







リョーマの前には、いつも自分がしているように不敵に笑った手塚の貌。

呆気に取られて立ち尽くすリョーマと繋いでいた手を離して、手塚はコートへ向けて歩き出した。

その後ろ姿が小さくなって行くのを見て、リョーマはすぐに意識を取り戻す。
離れ過ぎた距離でも手塚に届くように気持大きめの声で手塚に向けて声を投げた。









「Already it is the hand lag!」



































囚われの王子達。
リョーマも手塚もお互いに囚われております、ということからこのタイトルで。
抜け出せません。
こいつら絶対運命説檄推奨で。(またか)
さて、一段落つきました。
最終回は事後ってことで。

そして、今回の英文の訳。相変わらず機械まかせ何でね、あんまり信用しないでくださいね;
「はい」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
「オレ、アンタが好きだよ。大好き」
「なに?」
「どうしたの?」
「だって、アンタ。あー、もう、可愛いね。…本当に大好きだよ」
「もう手遅れだよ!」
誕生日企画トップへ
back  next
別館topへ