淘汰












目の前にはお互いの顔。
リョーマだけがじんわりと全身に汗をかいていた。


「越前、お前は性急すぎだ」

「そう?にしても、はっきり言うね、アンタも」

「明瞭言わないとお前はわからんだろう」

「まあ、遠回しに言われたら判る事も判んないよ。そうやってはっきり言ってくれるアンタは大好きなんだけど」

「昨日の、ことだが」

「オレがキスしたいって言ったこと?」

「そうだ」

「それについてはオレも聞きたいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「昨日の、まだ早いって、どういうこと?オレ達の関係においてってこと?」

「それもあるが、それ以上に、俺にとってまだ早いという意味、だろうか」

「だろうかって、他人事みたいに」

「…実際、自分のことなんだがよくわからないからな。そうとしか言いようがない」

「? どういうことさ」

「俺は、お前のことは好きだ。キスしたいっていう、お前の気持ちもわからんではない」

「じゃあ…!」

「でもな、なんというかだな、その…」

「??? さっきみたいにはっきり言ってよ」

「……」

「?  ……! 照れくさいの?」

「…まあ、そういうことだ」

「オレのこと好きなのに、照れくさいの?」

「……」

「はぁ。 そっか、まだ早いって、オレ達の関係以上に部長の気持ちが準備できてないから、ってことなんだ」

「そういう、ことになるかな」

「部長、顔真っ赤だよ?」

「ほっとけ」

「ホント、初心なんだから」

「うるさい」

「でもさ、オレの事は好きなんでしょ?」

「…ああ」

「でも、キスはできない」

「ああ」

「したくないって訳じゃないんだよね?」

「ああ」

「したいって思う?」

「……」

「ね、オレとキスしたいって思ったことある?」

「…時々」

「でも、する勇気がない?」

「ああ」

「……ねえ、部長はオレが好きになったからオレを好きになってくれたの?」

「? どういうことだ」

「そのまんまだよ。オレが好きにならなかったら、部長はオレを好きになってくれなかった?」

「俺の気持ちの原因は正直お前にあると思うぞ。何しろ、出会ってすぐに告白してきたのはお前だからな」

「ふぅん。じゃあ、オレが原因なの」

「越前、泣きそうな顔してるぞ」

「ほっといて」

「でもな」

「うん?」

「恋愛なんて、一方どちらかが好きにならないと始まらないだろう」

「そうだけどさ」

「それにだな、普通、あんなにすぐ告白してお前を好きになってろと言う方が無理だ」

「…うん、そうだね」

「越前、大丈夫か、目が潤んでるぞ」

「ほっといてよ」

「でもな、多分お前が告白してこなくても、俺は自分から言ってたかもな」

「え?どういうこと?」

「というかだな、お前は知らんだろうが、俺は好きになれそうな相手じゃない限り、告白するだけして逃げるような奴はその翌日にはフる」

「うわ、ひどっ」

「酷いとか言うな。それがお互いの為だろうが」

「そんなもん?」

「変に期待をさせても悪いだろう。こっちにその気がないのでは」

「あー、たしかにね」

「俺の言いたいことが判るか?」

「? …オレのことちょっとは好きだったから、次の日会ってもふらなかったってこと?」

「そういうことだ」

「え?ちょっと待って。オレ、今凄い嬉しいんだけど」

「?」

「だって、それって、元から両思いだった、ってこと?」

「そういう、ことになるかな。まあ、俺よりお前の方が早く好きになってたんだろうが」

「だって、オレ、一目惚れだもん」

「俺もまあ、自覚したのはお前が告白してからだが」

「無自覚なら、その前からだったってことだね」

「まあな」

「部長、目線逸らさないでよ」

「ほっといてくれ」

「気恥ずかしいんだ」

「うるさい」

「ねえ、やっぱり、キスしたいよ。ほんとなら、アンタが準備できるまで待ってたいけど、先が長そうなんだもん。
  少しくらい急いでもよくない?」

「……」

「アンタ、電話で言ってたよね。オレとのことゼンショしてくれるって」

「ああ」

「男に二言は無いよね」

「あ、ああ」

「じゃあ、キスさせてくれるのもゼンショしてよ」

「……明日じゃ駄目か?」

「! それまでに覚悟しといてくれるの?」

「ああ、善処しよう」

「ああ、もうっ、ホント、何でアンタってそんなに可愛いの!」

「可愛いとか言うな」

「部長、耳まで真っ赤だよ」

「わざわざ指摘しなくていい」

「自覚あるんだ?」

「まあな」

「ね、部長、これからどっか行かない?このままバイバイじゃ寂しい」

「どこか行きたいところはあるか?」

「そうだね、うーん。部長は?どこか行きたいところない?」

「特にない」

「オレと一緒ならどこでもいいって?素直じゃないんだから」

「……」

「怒んないでよ。そういうところも好きなんだけど」

「…で、どこか行きたい所はあるのか、お前は」

「オレも部長と一緒ならどこでもいいんだけど。そうだな…」

「あ」

「なに?」

「出かけに母に頼まれ事をされていたな」

「頼まれ事?」

「今晩の夕飯の買い出しだ」

「アンタが夕飯の買い物?」

「何か悪いか」

「ううん。何か、近い将来オレの奥さんになった時の予行練習みたい」

「俺がお前の所に嫁入りか?」

「そう。あ、でも部長も長男だっけ」

「お前が嫁入りしてこい」

「彩菜さんのご飯は美味しいからちょっと考えるけど、オレが嫁より部長が嫁の方が似合うよ」

「言ってろ」

「はいはい」

「じゃあ、行くか」

「勿論。ね、そのまま今日アンタんちに泊まってもいい?」

「昨日電話で俺の家じゃ何するかわからんからココにしたくせにか?」

「昨日は、ほら、オレ、気が立ってたから」

「何もしないな?」

「アンタの準備ができてないうちはね。我慢するよ」

「お前は…」

「なに?」

「優しさがあるんだかないんだか判らんな」

「こんなに心の広いオレ捕まえて何言ってんの」

「家には連絡をいれておけよ」

「はーい。ね、部長」

「何だ?」

「愛してるよ」

「……」

「部長、すっごい赤くなってるよ。今日何度目?」

「うるさい。行くぞ」












淘汰。
私、淘汰の意味がわからなくて辞書引きました。
ええと、不適当なものを除く、という意味でした。
デイリーコンサイス国語辞典、三省堂著より。
という訳で、お互いの中にある相手への誤解なんかを除去完了ってことで。
そういう風にちゃんと書けているでしょうか…
自分ではそういう感じに仕上げたつもりなんですが。うむむ。
first-x編、その4?でした。
次で終わる、のかな???
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