watch your step.
















「で、手塚はどうなの。越前の事、どう思ってるんだい?」

部活も終わり、部員は全員帰路に着いた。今、部室には手塚と大石のみ。

昨日、ここで起こった出来事について、切り出したのは手塚だ。
キスをされたことなどは、割愛して告白されたことを有りの侭、大石に打ち明けた。
そして、リョーマの告白を断った訳も。

手塚から一通り聞き、大石は間断なく先の様に答えた。

大石にそう尋ねられて、手塚はふる、と軽くかぶりを振った。

「正直……判らん」
「嫌いじゃ、ない訳ね、つまりは。大切な部活仲間ってところかい?」
「…そう、だな。あいつにはこの青学テニス部を背負ってたって欲しい」

あいつなら、越前リョーマという男なら、それができる。
テニスの強さも申し分無い。強さへの飽くなきこだわりも充分だ。
そして、リョーマは剛い。
何者にも屈しない、確固たる自分というものを持っている。
そこは、手塚も惹かれる部分があるのが正直なところだ。


「でも、手塚は酷いと思うよ?正直」

苦笑いも交えて、大石が軽く眉尻を下げた。
その大石の言葉に、手塚はどういう意味で言っているのか視線で先を促す。

「まだ自分に恋をする資格が無い、大人になっていないから、っていう理由で断られた越前に同情しそうだよ。しかも越前にそこのところは詳しく話した訳でもないんだろう?」
「そう、だな」

確か、あの時は自分は恋をするには早い、としか答えなかったことを手塚は思い出す。
自分の言葉と、それに傷付いた様なリョーマの表情も思い出して左胸が微かに痛んだ。

「手塚。手塚は大人になったらとか言うけどさ、恋には資格なんて必要ないんだよ。
  そういうモノよりも、大切なのは自分の気持ちだと思うけどね。
  恋愛なんて理性でするものじゃなくて本能でするもんだよ」
「そういうものか…?」
「そういうもの」

眉を顰め、少しばかり納得をしていないような手塚に大石は困ったように溜息を吐き出した。

「越前のことは嫌いじゃないんだろ?でも、それは恋愛云々じゃなくて仲間としてってことな訳だ。
  越前の気持ちを絶対に汲んでやれ、とは言わないけどさ、何て言うかな。好きだと言ってくれているんだから、ちょっと考えてみたら?」

ね?
説得するように大石は言葉を優しく紡いでみる。
手塚が多少なりリョーマに惹かれていることを知っているから。

それは、テニスの強さで惹かれてもいるだろう。
そして、越前リョーマという人間としての部分にも惹かれているのだろう。

手塚が気が付いていないところまで、大石には手に取る様にお見通しだった。

それに。
リョーマは可愛い後輩だ。
不幸せな目には遭わせてやりたくない。どうせなら、思いを遂げさせてやりたい。
そういう気持ちも、大石の中にはあった。


すっかり、オレも仲人役になったもんだな。
内心、そう自嘲して微かに笑んだ大石が手塚にはさっぱり訳が判らなくて不思議そうに首を傾げた。

「どうした?」
「いや、何でもないよ。
  あのさ手塚、こうしたらどうかな。
  暫く、越前を見ていなよ。そうだな、1週間でいいかな。越前を『部活仲間』としてじゃなくて『好きな人』として見てごらん。
  そうすればきっと答えが出るよ。

  越前の気持ちが受け止められないっていう答えかもしれないし。その逆の答えがでるかもしれないけど、何かしら、答えが出るだろうから。
  それで、その答えが出たら越前にそれを話してあげてやるといいよ。イエスでもノーでもね。
  それが越前の為だし、手塚の為だからさ」
「俺の、為?」
「そう。手塚だって傷付いてるんだろう?越前が自分のせいで泣いてたから」

大石の言葉に面食らった様に手塚が瞠目して黙った。
言われて、部活中に桃城と菊丸の会話で痛いと思った理由が少し判った気がした。

「本当に、お前はよく見ているな」
「まあ、通称青学の母ですからね」



そして、最終下刻時刻を知らせる放送が部室内にまで響いて、手塚と大石は席を立った。



































watch your step。
足下に気をつけて。
しっかり足下を見てごらんよ!みたいな感じで。
つまりは、気付けよ!手塚!(大石談)
そして、母、あっさり解決の巻。
というか、大石の喋り方のデフォルトがわっかんねー!
やばい、愛が足りないわ!らぶい筈なのに!
さて、ここからリョ塚追い込みに入ります。
お、お楽しみにして頂けると嬉しい、かと;
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